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岩波文庫と私、濫読日記風、その26

大きめの本屋に行くと文庫本目録などをくれる。 岩波文庫の小冊子「岩波文庫と私」をもらった。(非売品なので近所の書店で入手しよう。) 岩波書店の雑誌「図書」に2017年7月号から9月号に掲載された「岩波文庫と私」という下記の対談を収録したものだ。 1)小野正嗣、沼野充義、2)奥泉光、熊野純彦、3)佐藤優、保坂正康。 それぞれが、岩波文庫に入っている書籍について、自分自身の読書体験とともに、あーだ、こーだと語る。 岩波文庫は、いまだに岩波茂雄の創刊の辞が載っている。青空文庫にあったので、全文を掲載する。 読書子に寄す ――岩波文庫発刊に際して―― 岩波茂雄  真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたって文芸・哲学・社会科学・自然科学等種類のいかんを問わず、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果たさしめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。   昭和二年七月 http://www.aozora.gr.jp/cards/001119/files/42753_16113.html 昭和二年当時は円本ブーム、文学全集ブームだったらしい。円本は一冊が安くてお得だけど、セットで予約購読しなければならない。それに対して岩崎茂雄の文庫は全巻買わなくていい、一冊ずつ誰でも読める。業界の常識に喧嘩を売っているようなものである。すごい。 いまだに「読書子に寄す」を岩波文庫に載せているところがロックだ。 この小冊子の小野正嗣と沼野充義や奥泉光と熊野純彦の対談で、古典だけではなくて、「大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)」のような現代作家の作品も読めるということを知った。 「文語訳 旧約聖書 I 律法...

大きめの本屋に行くと文庫本目録などをくれる。

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岩波文庫の小冊子「岩波文庫と私」をもらった。(非売品なので近所の書店で入手しよう。)

岩波書店の雑誌「図書」に2017年7月号から9月号に掲載された「岩波文庫と私」という下記の対談を収録したものだ。

1)小野正嗣、沼野充義、2)奥泉光、熊野純彦、3)佐藤優、保坂正康。

それぞれが、岩波文庫に入っている書籍について、自分自身の読書体験とともに、あーだ、こーだと語る。

岩波文庫は、いまだに岩波茂雄の創刊の辞が載っている。青空文庫にあったので、全文を掲載する。

読書子に寄す

――岩波文庫発刊に際して――

岩波茂雄

 真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたって文芸・哲学・社会科学・自然科学等種類のいかんを問わず、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果たさしめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。

  昭和二年七月

http://www.aozora.gr.jp/cards/001119/files/42753_16113.html

昭和二年当時は円本ブーム、文学全集ブームだったらしい。円本は一冊が安くてお得だけど、セットで予約購読しなければならない。それに対して岩崎茂雄の文庫は全巻買わなくていい、一冊ずつ誰でも読める。業界の常識に喧嘩を売っているようなものである。すごい。

いまだに「読書子に寄す」を岩波文庫に載せているところがロックだ。

この小冊子の小野正嗣と沼野充義や奥泉光と熊野純彦の対談で、古典だけではなくて、「大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)」のような現代作家の作品も読めるということを知った。

文語訳 旧約聖書 I 律法 (岩波文庫)」も最近出たらしい。

数学関係でいうと「ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)」が、紹介されていた。持っているし読んだのだけど、ゲーデルの不完全性定理については全く理解できていない。本文より解説が充実しているので、それを読んでわかっている気になるのだけど、解説もよく理解できていない。

岩波文庫の古典の網羅率はすごいという印象があって大抵のものは入っているのではないかと思うくらいだ。

岩波文庫は書店買取なので(他の出版社は委託販売が多い)、大きめの本屋でないと扱っていないことがある。本屋で岩波文庫の棚の大きさで、その本屋の本気度が図れるとも言える。自分も地方に行ってその土地の本屋によると、知らずしらずのうちに岩波文庫の棚を探してみてしまう。その品揃えでその本屋のテーストを勝手に評価する嫌なお客になる。

図書 2017年 臨時増刊号 - 岩波書店 岩波文庫90周年記念、図書臨時増刊号で紹介されていた「やし酒飲み (岩波文庫)」は今年読んだ中で、期待しないで読んで最もインパクトのあった岩波文庫の本である。

本屋に行って、出版社の小冊子をもらうと、読書の幅がちょっと広がるような気がする。お勧めしたい。


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