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蘭学事始 (岩波文庫)、杉田玄白著、読了、濫読日記風 2018、その61

蘭学事始 (岩波文庫 青 20-1)を読んだ。なんで「蘭学事始」を読もうと思ったのだろうか。*1玄白がこの回想録を書いたのは、83歳のときだそうだ。(4ページ)「蘭学事始」が野上豊一郎の校注で岩波文庫に加えられたのは昭和5年(1930年)7月で、その後緒方富雄の校注で昭和34年(1959年3月)に改版が出版された。それから20年あまりで版を重ねて、発行部数は約19万部に達したそうである。本書は岩波文庫(1982年第28刷改版発行)の新版である(新版の刊行にあたって、3ページ)200年余り前の玄白の書を読めるというのも奇跡だが、それが岩波文庫で600円(税抜)という廉価で入手できるというのもすごい。岩波文庫はロックだ。玄白というすごい人の回顧録を若い世代に伝えようとするその気概が岩波文庫という形式にほとばしっている。本書は玄白が若き日の自分の蘭学研究を回想するという形式をとっている。医学書「ターヘル・アナトミア(解体新書)」を翻訳するところがすごい。明和八年(1771年)春頃、ターヘル・アナトミアと出会うが一字も読むことができない。(29〜30ページ) そんなとき、千住骨ヶ原(当時の刑場の一つ、現在の荒川区南千住五丁目あたり)で死刑囚の腑分け(解剖)をするらしいと聞きつけそれを見学に行く。そしてターヘル・アナトミアの正確さに驚き、帰路、前野良沢、中川淳庵、杉田玄白らは翻訳をせねばならないと語り合う。(37ページ)辞書も何にもない時代の翻訳作業は困難を極めるが、約3年苦労を重ね翻訳を完了する。それが「解体新書」となる。玄白42歳、安永三年(1774年)のことである。本書は文語体なので慣れないとなかなか読みずらい。それでも漢字は新字体、新仮名遣いでふりがなや註・解説・年表も充実しているため、自分のような素養のない人間でもどうにかこうにか辛うじて読んだ。蘭学事始が世間に広く知られるようになった経緯については明治23年(1890年)第1回日本医学会総会の機会に再版した序文に福沢諭吉がそれを記している。原稿は杉田家に秘蔵されていたが、安政二年(1855年)江戸大地震の火災で焼失。露天で神田孝平氏が偶然写本を発見した。「かのターヘル・アナトミアの書にうち向ひしに、誠に艪舵(ろかじ)なき船の大海に乗り出だせしが如く、茫洋(ぼうよう)として寄るべきかたなく、たゞあきれにあきれて居たるまでなり。」(38ページ)のくだりで諭吉は感涙したとある。(157ページ)蘭学事始はロックだ。読めてよかったと思う。再読したいと思った一冊である。 濫読日記風 2018 不安な個人、立ちすくむ国家、経産省若手プロジェクト著、読了、濫読日記風 2018、その60 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 遅刻してくれて、ありがとう(上、下) 常識が通じない時代の生き方、トーマス・フリードマン著、伏見威蕃訳、読了、濫読日記風 2018、その59 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 RISC-V原典 オープンアーキテクチャのススメ、デイビッド・パターソン&アンドリュー・ウォーターマン著、成田光彰訳、読了、濫読日記風 2018、その58 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 オン・ザ・ロード (河出文庫)、ジャック・ケルアック著、青山南訳、読了、濫読日記風 2018、その57 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 天才 (幻冬舎文庫)、石原慎太郎著、読了、濫読日記風 2018、その56 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)、平田オリザ著、読了、濫読日記風 2018、その55 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 歴史の進歩とはなにか (岩波新書 青版 800)、市井三郎著、読了、濫読日記風 2018、その54 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 情報の文明学 (中公文庫)、梅棹忠夫著、読了、濫読日記風 2018、その53 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 歴史とは何か (岩波新書)、E.H.カー著、清水幾太郎訳、読了、濫読日記風 2018、その52 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 ソロー『森の生活』を漫画で読む、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(原作)、ジョン・ポーセリノ(編・絵)、金原瑞人訳、読了、濫読日記風 2018、その51 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)、レイモンド・チャンドラー、村上春樹訳、読了、濫読日記風 2018、その50 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 たそがれ清兵衛 (新潮文庫)、藤沢周平著、読了、濫読日記風 2018、その49 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 複業の教科書、西村創一朗著、読了、濫読日記風 2018、その48 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 古都 (新潮文庫)、川端康成著、読了、濫読日記風 2018、その47 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま学芸文庫)、イヴァン・イリイチ著、Ivan Illich(原著)、渡辺京二&渡辺梨佐訳、読了、濫読日記風 2018、その46 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応、アルバート・O・ハーシュマン著、読了、濫読日記風 2018、その45 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 創造的論文の書き方、伊丹敬之著、読了、濫読日記風 2018、その44 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 マタギ(ヤマケイ文庫)、矢口高雄著、読了、濫読日記風 2018、その43 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)、スティーヴン・ウィット著、関美和訳、読了、濫読日記風 2018、その42 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 社会的共通資本 (岩波新書)、宇沢弘文著、読了、濫読日記風 2018、その41 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 のうだま1 やる気の秘密 (幻冬舎文庫)、上大岡トメ&池谷裕二著、読了、濫読日記風 2018、その40 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 まんがでわかる 理科系の作文技術 (単行本)、久間月慧太郎(イラスト)、木下是雄(原作)、読了、濫読日記風 2018、その39 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 琥珀の夢 小説 鳥井信治郎、伊集院静著、読了、濫読日記風 2018、その38 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 幽霊たち(新潮文庫)、ポール・オースター著、柴田元幸訳、読了、濫読日記風 2018、その37 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)、マーク・トウェイン著、柴田元幸訳、読了、濫読日記風 2018、その36 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 物語論 (講談社現代新書)、木村俊介著、読了、濫読日記風 2018、その35 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 金閣寺、三島由紀夫著、読了、濫読日記風 2018、その34 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 フクロウ、宮崎学著、読了、濫読日記風 2018、その33 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 森の探偵―無人カメラがとらえた日本の自然、宮崎学、小原真史著、読了、濫読日記風 2018、その32 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法、山田竜也著、読了、濫読日記風 2018、その31 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 組織にいながら、自由に働く。仲山進也著、読了、濫読日記風 2018、その30 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 図書館に訊け!、井上真琴著、読了、濫読日記風 2018、その29 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 機械との競争、エリック・ブリニョルフソン著、読了、濫読日記風 2018、その28 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 ミライの授業、瀧本哲史著、読了、濫読日記風 2018、その27 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 AI vs. 教科書が読めない子どもたち、新井紀子著、読了、濫読日記風 2018、その26 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生、デイヴィッド・グラン著、読了、濫読日記風 2018、その25 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 老人読書日記、新藤兼人著、読了、濫読日記風 2018、その24 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 MARCH 非暴力の闘い、ジョン・ルイス著、読了、濫読日記風 2018、その23 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 情報生産者になる、上野千鶴子著、読了、濫読日記風 2018、その22 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 アメリカ紀行(岩波文庫)、チャールズ・ディケンズ著、読了、濫読日記風 2018、その21 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明、伊神満著、読了、濫読日記風 2018、その20 - 未来のいつか/hyoshiokの日記...


蘭学事始 (岩波文庫 青 20-1)を読んだ。

なんで「蘭学事始」を読もうと思ったのだろうか。*1

玄白がこの回想録を書いたのは、83歳のときだそうだ。(4ページ)

蘭学事始」が野上豊一郎の校注で岩波文庫に加えられたのは昭和5年(1930年)7月で、その後緒方富雄の校注で昭和34年(1959年3月)に改版が出版された。それから20年あまりで版を重ねて、発行部数は約19万部に達したそうである。本書は岩波文庫(1982年第28刷改版発行)の新版である(新版の刊行にあたって、3ページ)

200年余り前の玄白の書を読めるというのも奇跡だが、それが岩波文庫で600円(税抜)という廉価で入手できるというのもすごい。岩波文庫はロックだ。

玄白というすごい人の回顧録を若い世代に伝えようとするその気概が岩波文庫という形式にほとばしっている。

本書は玄白が若き日の自分の蘭学研究を回想するという形式をとっている。医学書ターヘル・アナトミア(解体新書)」を翻訳するところがすごい。

明和八年(1771年)春頃、ターヘル・アナトミアと出会うが一字も読むことができない。(29〜30ページ)
そんなとき、千住骨ヶ原(当時の刑場の一つ、現在の荒川区南千住五丁目あたり)で死刑囚の腑分け(解剖)をするらしいと聞きつけそれを見学に行く。そしてターヘル・アナトミアの正確さに驚き、帰路、前野良沢中川淳庵杉田玄白らは翻訳をせねばならないと語り合う。(37ページ)

辞書も何にもない時代の翻訳作業は困難を極めるが、約3年苦労を重ね翻訳を完了する。それが「解体新書」となる。玄白42歳、安永三年(1774年)のことである。

本書は文語体なので慣れないとなかなか読みずらい。それでも漢字は新字体、新仮名遣いでふりがなや註・解説・年表も充実しているため、自分のような素養のない人間でもどうにかこうにか辛うじて読んだ。

蘭学事始が世間に広く知られるようになった経緯については明治23年(1890年)第1回日本医学会総会の機会に再版した序文に福沢諭吉がそれを記している。原稿は杉田家に秘蔵されていたが、安政二年(1855年)江戸大地震の火災で焼失。露天で神田孝平氏が偶然写本を発見した。「かのターヘル・アナトミアの書にうち向ひしに、誠に艪舵(ろかじ)なき船の大海に乗り出だせしが如く、茫洋(ぼうよう)として寄るべきかたなく、たゞあきれにあきれて居たるまでなり。」(38ページ)のくだりで諭吉は感涙したとある。(157ページ)

蘭学事始はロックだ。読めてよかったと思う。再読したいと思った一冊である。


濫読日記風 2018

*1:論語の読書会に参加したことが一つのきっかけだと思うのだけど記憶は定かでない。東北方面への行き当たりばったりの旅のお供にリュックに入れて読んだ

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