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新しい協業グループがリアルタイムLinuxを推進

原文は 2015 年 10 月 8 日に掲載されました。

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今週の LinuxCon で Linux Foundation は、リアルタイム Linux プロジェクトの資金管理の責任を担うことを発表しました。これにより、組込み Linux をリアルタイム処理において専用リアルタイム オペレーティング システム (RTOS) と同等にするという 15 年来の活動は、完成に至ることが期待されます。リアルタイム Linux (RTL) グループは、リアルタイム Linux 協業プロジェクトとしてより多くの資金や開発者、およびメインライン カーネル開発とのより緊密な統合を実現し、さらに活性化されるでしょう。

Linux Foundation によると、RTL を同組織配下のプロジェクトとすることにより、「業界全体で、何百万ドルという研究・開発資金が節約できます。」また、「アップストリームのしっかりとしたカーネル テスト基盤を通じ、コードの質の改善が期待できる」と Linux Foundation は言います。

この 10 年間、RTL プロジェクトは Open Source Automation Development Lab (OSADL) によって管理され、特に最近では OSADL からの資金提供も得ています。OSADL は引き続き新しい協業プロジェクトのゴールド メンバーとして参加しますが、来年 1 月には Linux Foundation に資金確保の責務を引き継ぐ予定です。RTL プロジェクトと OSADL は、RT-Preempt (もしくはPreempt-RT) パッチをメンテナンスし、定期的にそれらを Linux のメインラインにアップデートする責任を負ってきました。

長く OSADL のゼネラル マネジャーを務めている Dr. Carsten Emde によると、仕事の 90% は完成しているとのことです。「家を建てるのに似ています。壁、窓、ドアのような主な構成要素は既にできています。RTL の場合は、高精度タイマー、割り込みスレッド、そしてプライオリティ継承 mutex です。仕事を仕上げるためにはカーペットや壁紙などのこまごまとしたものも必要です」と彼は説明しています。

Emde によると、パッチと格闘する覚悟さえあれば、リアルタイムLinux は多くの RTOS と技術的にすでに同等です。Emde は言います。「プロジェクトの目標は、Linux システムに事前設定可能な確定的 (最悪の場合を想定した) 遅延時間保証を提供することだけでした。今日、この目標はカーネルがパッチされた時に達成されますが、将来的にはパッチされていないメインライン RT カーネルが利用された時に同じ目標が達成されるのです。唯一の、そしてもちろん重要な違いは、そのようになった時にツリーから外れたコンポーネントを絶えずメインラインに適応させる必要がなくなるため、メンテナンス作業がずっと軽くなることです。」

RTL 協業グループは、この 10 年間主要メンテナーだった Thomas Gleixner の指導の下に継続されます。今週、Gleixner は Linux Foundation フェローに任命され、Linux カーネルのステイブル ツリー メンテナーの Greg Kroah-Hartman、Yocto プロジェクト メンテナーの Richard Purdie、Linus Torvalds らの仲間入りをしました。

Emde によると、RTL の副メンテナーであり、同時に「古いけれどまだメンテナンスされているカーネル バージョンのメンテナンスを行っている」Red Hat の Steven Rostedt は、RTL の主要開発者で最近では顧問のような立場にある Red Hat の Ingo Molnar と共に、引き続き同プロジェクトに参加します。しかし Red Hat は RTL 協業グループのメンバーではありません。代わりに Google が唯一のプラチナ メンバーとして参加し、ゴールド メンバーには National Instruments (NI)、OSADL、Texas Instruments (TI) がいます。シルバー メンバーはAltera、ARM、Intel 、IBM です。

 

リアルタイムへの長い道のり

15年以上前にLinux が初めて組込みデバイスの世界に登場した時、Wind River の VxWorks のような RTOS が優位に立つ組込みコンピューティング市場に立ち向かい始めました。それらの RTOS は、多くの産業・航空電子・運輸アプリケーションに必要な極めて確定的でリアルタイム性を強化したカーネルを提供し続けています。その当時、すでに製品化され、リアルタイム性においても優っていた Microsoft の Windows CE と同じく、Linux も産業界の潜在的な顧客の抵抗やあからさまな嘲りに直面しました。デスクトップから派生したこれらのディストリビューションは、軽量な家電製品は良いかもしれないものの、リアルタイム性を強化したカーネルを欠いているとされていました。そのような特性こそが、1 秒の何分の 1 のレベルの信頼性を保証し、確定的タスク スケジューリングを必要とするデバイスの RTOS を選ぶ理由だったのです。

Linux のリアルタイム機能を改善することは、MontaVista のような組込み Linux の開拓者にとっては初期の頃の目標でした。その後数年で、RTL 開発は 2006 年に設立された OSADL  や Real-Time Linux Foundation (RTLF) のようなさまざまなグループで加速され、形を成して行きました。2009 年にRTLF がOSADL と合併したOSADL とその RTL グループが Preempt-RT パッチのメンテナンスとアップストリーム プロセスの責任を負うようになりました。OSADL は Safety Critical Linux などのオートメーション関連プロジェクトも管理しています。

OSADL の RTL における責務は 3 段階で拡大して行きました。擁護と広報、テストと品質評価、そして最後に資金提供です。初期の頃、OSADL の役割は記事を書き、プレゼンを行い、トレーニング プログラムを作成し、RTL の利点について「言葉を広める」ことだった、と Emde は言っています。「比較的保守的なオートメーション産業に、Linux やそのコミュニティ ベース開発モデルのような新しいテクノロジーを導入してもらうには、まず信頼の醸成が必要でした。商用の RTOS から Linux に切り替えるということは、企業がコミュニティと対話するために新しい戦略やプロセスを導入することを意味します」」と彼は言います

その後、OASDL は技術的な性能データを提供するようになり、品質評価とテストのためのセンターを設立し、オープン ソースのコンプライアンスと安全性認定に関し、産業界のメンバーを支援しました。

RTL が成熟して、退潮傾向の Windows CE とリアルタイム機能においても同等となることで RTOS 市場に入り込むにつれ、競合関係にあったリアルタイム Linux プロジェクト (おもに Xenomai) は RTL を統合し始めました。

Emde は言います。「RT パッチの成功と、いずれはメインライン Linux と完全にマージするという明白な予想により、Xenomai の焦点が変わってきました。Xenomai 3.0 は RT パッチと組み合わせて利用することができ、他のシステムのために書かれたリアルタイム  ソース コードの再利用を可能にする『スキン』と呼ばれる仕組みを提供しています。しかし、Xenomai はデュアル カーネル アプローチを取っている一方で、RT パッチはシングル Linux カーネルにしか適用できないため、まだ完全には統一できていません。」

ここ数年は、RTL グループへの資金供給が縮小し、OSADL はその役割も引き受けるようになりました。「資金不足により開発がやや遅れた際、OSADL は直接 Thomas Gleixner に開発費を支払うことで 3 番目の節目を迎えました」と Emde は言います。

Emde が 10 月 5 日のブログに書いているように、リアルタイム Linux がコアとなる産業ベースを超えて自動車や電気通信などの分野への拡大しているため、資金提供の仕組みも拡張しなければなりません。「電気通信など、他の産業も確定的遅延時間の Linux カーネルを活用しており、オートメーション産業だけが残りの作業に資金を提供するのは不公平ではないか」と Emde は書いています。

Linux Foundation が資金提供に関心を示した時、OSADL は「資金提供と管理のチャネルを 1 つにした方が効率的だと考えた」と Emde は言います。しかし、ゴールド メンバーとして OSADL はプロジェクトの管理に引き続き貢献し、広報と品質保証活動も継続する、と付け加えています。

 

自動車産業はリアルタイムの強化を期待

RTL は産業アプリケーションにおいて引き続き最も成長し、そこでは、RTOS アプリケーションを徐々に置き換えていく、と Emde は言います。一方で自動車分野での成長も著しく、その後、鉄道や航空電子にも広がると付け加えています。

Automotive Grade Linux (AGL) ワークグループとの協業の可能性もある中、RTL に関して Linux Foundation の目差すものとして、Linux の自動車産業における役割の増大が鍵と言えます。自動車は、Google がプラチナ メンバーとして参加する重要な動機にもなったかもしれない、と Emde は推測しています。加えて、TI はその Jacinto プロセッサーにより自動車と深く関わっています。

AGL のような Linux 指向の自動車プロジェクトは、車載インフォテインメントを超えて、QNX のような RTOSが優位を占めるクラスター コントロールやテレマティックスに Linux を適用することを狙っています。自律走行車は特にリアルタイム性能を強く必要としています。

Emde は、OSADL の SIL2LinuxMP プロジェクトが RTL を自動車産業に拡張するのに重要な役割を果たすかもしれない、と指摘しています。SIL2LinuxMP は自動車用のプロジェクトではありませんが、BMW が参加しており、自動車は重要な応用の 1 つとなっています。同プロジェクトは RTL をシングルまたはマルチコア COTS (Commercial Off the Shelf) ボードで利用するのに必要なベース コンポーネントを認証することを目的としています。RTL にアクセスするためのブートローダー、root ファイルシステム、Linux カーネル、C ライブラリ バインディングを明確にしています。

自律型ドローンやロボットもリアルタイムに最適の領域であり、Xenomai はすでに多くのロボットや一部のドローンにも利用されています。しかしながら、RTL の役割は幅広い組込み Linux 家電製品や IoT (モノのインターネット) のアプリケーションの世界に制限されるでしょう。おもな障壁となっているのが無線通信の遅延時間とインターネットそのものです。

Emde は言います。「リアルタイム Linux は、機械自体の制御や、機械と周辺機器の間の制御で役割を果たしますが、ネットワークに繋がった機械との間ではそれほど利用されません。インターネット経由のリアルタイムはおそらくないでしょう。」

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