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Qt 5.6 が長期サポート版になり、Yocto プロジェクトとの統合が強化

原文は 2016 年 3 月 8 日に掲載されました。

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Qt Company は複数のプラットフォームに跨るアプリケーション / ユーザー インターフェイス (UI)  開発フレームワーク Qt バージョン 5.6をリリースし、Qt の組込み Linux プラットフォーム Boot  to Qt  を Yocto プロジェクト ツールとより整合したものにしています。この結果、「開発者は容易に Qt の提供するものすべてを自らの Yocto  ベース ソフトウェア スタックに組み込んだり、Qt の Yocto 対応ソフトウェア スタックを製品ニーズに合わせてカスタマイズしたりできる」と Qt Company は言います。

Qt 5.6 の多くの機能強化の中でも、特に強調すべきは、高解像度ディスプレイの自動スケーリングの追加、Qt バーチャル キーボードの改善、より多くの組込み Linux ボードに対するサポート拡張、そして Qt WebEngine の改善などです。加えて、バージョン 5.6 は Windows 10 を完全サポートし、さらに、Windows ホスト PC を使って組込み Linux デバイスを開発する機能も提供されています。

Qt 5.6 は、Nokia がまだ Qt プロジェクトのスポンサーとなっていた 2011 年の Qt 4.8 以来初めての長期サポート (LTS) 版です。LTS は、最低 3 年間はパッチを提供し、バグ・セキュリティ修正を保証します。また Lars Knoll が Qt 5.6 のブログに記しているように、LTS は Qt チームに「今後の Qt バージョンに関する自由度」を与えます。

LTS という柱を地上に打ち立てることにより、Qt はソフトウェア開発とリリースの新基盤である Continuous Integration System (COIN) に移行することが可能となりました。フリー・オープン ソース版 Qt とサブスクリプション ベースの商用版 Qt の両方を提供する Qt Company は、この 1 年間で新システムに移行し、古い Jenkins ベースの基盤を置き換えています。COIN はより敏速にコード変更の統合とテストを行うことを可能にし、「インクリメンタルに変更分のみを取り扱うことにより、リポジトリやソース コードの全体をまとめやすくなる」と Knoll は書いています。

Qt 5.6 では、ほとんどのリリース バイナリが同一システム内で生成されており、このことでかなりパッケージ作成時間が短縮されたと言われています。また、初めて Qt  チームは「さまざまな Qt ブランチに対応したさまざまなシステム構成とプラットフォームを効率的にサポート」できるようになったと Knoll は書いています。

LTS 版のリリースにより、Qt は古いプラットフォームのしがらみから決別する自由を与えられます。今後リリースされる Qt 5.7 は、C++11 (C++ 2011 年規格) 対応コンパイラーを要し、一つ一つ名前を挙げることのできないいくつかの古いプラットフォームを切り離します。Qt 5.7 はまた、LGPLv2 から LGPLv3 への移行を含むライセンス条件の変更、および「以前はクローズされていたコンポーネントの多くを GPL のもとにオープン ソースにすること」も同時に行われると Qt Company は言います。

 

すぐに使える Yocto プロジェクト

組込み Linux の開発者は、開発ボードの敏速な立ち上げを可能にする Boot to Qt 組込みワークフロー スタックを含む、Qt  for Device Creation と呼ばれる Qt モジュールを使います。以前は、開発者たちは Boot to Qt をカスタマイズする際は Yocto プロジェクト ツールを利用していました。Qt 5.6 は各種ツールと Yocto メタレイヤの両方において Qt との相性を大幅に改善しました。

Qt 5.6 では「Boot to Qt スタックをカスタマイズするのも、関連する Qt 部品を自分の Yocto ベース  ビルドに直接組み込むのも、より簡単になります」と Knoll は書いています。Linux Foundation の管轄のもと、オープンソース Yocto プロジェクトは、開発者がアーキテクチャを選ばずにカスタム組込み Linux デバイスを作れるテンプレート、ツール、およびメソッドを提供しています。これらには開発環境、エミュレーション環境、デバッガー、アプリケーション ツールキット ジェネレーター、メタデータ、ドキュメンテーション、および OpenEmbedded コア システム コンポーネント レシピが含まれます。

以下は Qt 5.6 のおもな見どころです。

  • 改善された Yocto プロジェクト サポート – 上記をご覧ください。
  • LTS - 最低 3 年間はアップデートとパッチが保証され、その後はサポートの延長を購入できます。
      
  • 高解像度サポート – Qt は Mac OS X 版を超える高解像度サポートを実現しました。あらゆるプラットフォームの標準的な解像度で書かれたアプリケーションを自動的に高解像度ディスプレイに対応させることができます。Qt はフォント サイズやウィンドウ エレメント、アイコンなどをピクセル密度をベースに自動的に調整できます。
      
  • Windows 10 サポート – Qt 5.6 は、PC、タブレット、スマートフォンを含む Windows 10 のフル サポートを実現する初めての版です。再コンパイルすることでほとんどのアプリが Windows ストアで配布できるようになります。Windows Embedded Compact サポートは 2013 年版にアップデートされます。
      
  • 組込み Linux のための Windows ホスト サポート - Qt の Windows 版を利用している開発者は、組込み Linux デバイスのためのアプリケーション開発をする際に Qt Device Creation に直接入ることができます。
      
  • ブラウザの改善 – Qt WebEngine のブラウザ エンジンは Chromium 45 になり、Flash などの Pepper プラグイン (PPAPI) のサポートが追加されます。新しい下位 API のためのモジュールが用意され、Linux ユーザーは「バンドルされたライブラリではなく、システム ライブラリ」を利用できます。
      
  • Qt バーチャル キーボードのアップデート – 新しいキーボード アプリケーションには手書き文字認識 (HWR) 機能、パフォーマンス改善、Nuance T9 Write の統合、そして繁体字中国語サポートが追加されます。現在 GPLv3 のライセンスで入手可能です。
      
  • 新しい組込みLinux ハードウェアサポート – Qt 5.6 は Nvidia Jetson Pro、Intel NUC、および NXP i.MX6 を利用しているシステムなどのターゲットにサポートを拡張しています。
      
  • Qt Location - Qt Location モジュールが完全にサポートされるようになり、Qt アプリケーション内で地図、ナビゲーション、関心地点 (POI) を統合できるようにします。HERE、Mapbox、OpenStreetMap のためのプラグインが提供されます。
      
  • Qt API の強化 – Qt 5.6 では C++11 のサポート、Qt Multimedia、OpenGL ES 3 の互換性、その他多くの改善がされています。
      
  • テクノロジー プレビュー – 将来的な Qt リリースのプレビューとして、Qt 3D の強化版や CanBus / ModBus をサポートするための新しい Qt SerialBus などが含まれます。Qt Quick Controls 2 は大幅にリニューアルし、「特に組込みデバイスのパフォーマンス改善」をもたらしまます。
      
  • Qt Creator 3.6.0 - Qt 5.6 は新しい Qt Creator 3.6.0 GUI デザインパッケージと互換性があります。UML スタイルのダイアグラムに適した実験的なエディターがあることに加えて、Clang ベースの C/C++ コードモデル等も改善されています。今回のリリースでは 32 ビット Linux 用のビルド済みバイナリは提供していません。
      
  • アプリケーション開発向け Qt のディスカウント - 今週、Qt Company は、アプリケーション開発向けに商用 Qt の大幅なサブスクリプション費用を削減できるスタートアップ プランを発表しました。これは売り上げが 10 万ドル以下の企業にのみ適用可能で、毎月 49 ドルの当該プランではプロフェッショナル Qt サポートをなくしています。しかし同社は、約 100 万人の Qt 開発者たちが、さまざまな Qt フォーラムにおいて新規参入企業を喜んで支援すると指摘しています。

 

Qt の背景説明

一部読者が指摘しているように、Qt は私たちが 1 月に発表した Android をサポートするフリー モバイル アプリケーション開発フレームワーク ベスト10に含めるべきだったのではないかという意見もあります。しかし、Qt は少し種類が違います。フル アプリケーションに加え、GUI 開発をもサポートし、Javascript よりも C++ に重点を置き、Android と iOS サポートは相対的にまだ最近始まったばかりです。

2011 年に Digia が Nokia からこの商業活動の体制を買収し、2012 年にはオープン ソース Qt プロジェクトの保護者責任を負って以来、フィンランドのこの会社はモバイル サポート拡張に重点的に取り組んできました。Android と iOS 向けの最初のプロダクション レベルの Qt ポートは、2013 年後半にベータ版 Qt 5.2 として登場しました。これは Qt Quick と宣言型スクリプト言語 QML により実現され、これにより Javascript の統合が可能になりました。

Qt は常に複数のプラットフォームに跨って利用されてきました。現在でも多くのプラットフォーム、とりわけ、Linux、Windows、OS X、Android、iOS をサポートしていますが、組込み実装については Linux に重点を置いています。初代 Qt の Qt/X11 は 1990 年代前半にノルウェーの企業 Trolltech が提供し、疑似オープン ソースの Unix 版とプロプライエタリの Windows 版の 2 種類がありました。このすぐ後に Linux 版が続いて登場しました。2000 年には、KDE プロジェクト (その当時 Qt を利用していた) を巻き込んだ Linux コミュニティにおける議論の後、完全なオープン ソース GPL v2 のもとに開発フレームワークはリリースされました。

その後 Trolltech は Mac 版にまで拡張し、2003 年には Linux ベース Qt / Embedded の上に構築された Linux 対応の Qtopia 組込みスタックをカスタマイズし、ハンドヘルド機器を超えて携帯電話をサポートしました。Qtopia は「組込み Linux のためのデファクト スタンダード アプリケーション プラットフォーム」と広告されました。

Trolltech は成長を続けましたが、2008 年に Nokia が約 1 億 5000 万ドルで同社を買収しました。これにより Nokia が Symbian を徐々に廃止し、Qtopia Linux に乗り換えるのではという憶測が浮上しました。2009 年に Nokia の新しい Qt ソフトウェア部門がクロスプラットフォーム Qt 4.5で Qtopia を置き換え、LGPL ライセンスに切り替えました。

Nokia は新しい MeeGo プロジェクトで Intel とパートナーになり、同プロジェクトはモバイルでの利用を含んでいましたが、2011 年に Nokia がMicrosoft とのパートナーシップを発表した結果、MeeGo が推進するNokia という希望は消え失せてしまいました。Nokia は MeeGo を棚上げし、Windows フォンに重点を置くことを宣言しました。翌年 Nokia は商用Qt ビジネスとオープン ソース プロジェクトを Digia に売却し、同社は Qt Company をスピン オフしました。

 
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