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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.2

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

「Linuxビジネスの作り方」VOL.2

 

前回は、x86サーバー市場概要とLinuxサーバービジネスについて、少し紹介しました。

今回からは、「企業向けのLinux市場」をみていきたいと思います。


■Linuxビジネスの課題

2000年前後にLinux が第一次の盛り上がりを見せました。そのころにはじまったイベントとしては、LinuxWorld などがあり、当時は大きな盛り上がりを見せていました。

しかし、当時、ほとんどのLinux関連企業が、売り上げを十分に確保し成長をしていくという意味で、試行錯誤を繰り返していた時期でもあります。

余談:

たいてい、メディアなどで新しいテクノロジーが話題になるときは、同時に非常に多くの人がセミナーやカンファレンスに参加されます(今だと「クラウド」セミナーだと参加者が非常に多いですね)。しかし、多くの場合、参加者の目的は情報収集であり、実際の投資/購買活動につながるまでには時間がかかります。メディアの注目が落ち着いてきたころに、徐々にベンダーにとって、売り上げが伸びるようになり、成果が出はじめることがよくあります。私自身の経験では、企業向けのITテクロノジー製品では、ビジネスが本格的に立ち上がるまでは少なくとも2年くらいはかかるのではと思います。しかし、セミナーの参加者が多いから、ビジネスも好調だろうという考えを持っている人もたくさんいて、「セミナーばっかりやって、案件や売り上げはどうしたんだ」などと突っ込まれた経験のある人もいるのではと思います。イベントなどのマーケティング活動については、後日さらに詳しく説明します。


事業戦略やマーケティングの本を読むと、商品を販売していくには、いくつかのセオリーといえることを実施する必要があると理解できます。例えば、
 
  ◆バリューチェーン を整備しなくていけない
  ◆ホールプロダクトを定義しなくてはいけない

といったものです。しかし、それ以前に、Linuxビジネスにとって、最大の問題がありました。それは、

   ◆ Linux ビジネスの結果を何を持って評価するか
   
ということでした。

ここでは、Linuxが無償であるべきかどうかという議論ではなく、企業で新しいビジネスを立ち上げていくときには、その評価基準を何に置くべきであるか、ということに注力して、説明します。

お客様やパートナーから、Linux案件の支援は求められていることが多かったベンダーは、確かにLinuxユーザーがいるのはわかります。特にITバブルが崩壊し、景気が持ち直してきた2002年以降は、急に問い合わせが増えてきたという実感があります。

しかし、企業として、投資を実施するには、きちんとしたビジネス予測や結果に基づいて、判断を実施してくことが求められます。特に、新規でビジネスを立ち上げるには、人への投資がかかせません。

例えば、Linux専任担当を1名配置とします。その場合、人件費(東京のサラリーマンの平均所得は600万円程度)、オフィス家賃(会社に固定席がある社員の方の場所代も当然必要)、共有サービス費用や福利厚生費(人事、雇用保険など) を合計した費用は、大雑把に1000万円程度はかかるかと思います(個人の給与が1000万円ではないのに注意)。

そして、マーケティング1名、SEを2名、サポートサービスを5名(24時間保守サービスを提供するには、8時間交代勤務で3名必要。3名だけだと、有給などで休 むこともできないので、少なくとも5名は必要) で体制を組む場合、8名x 1000万円となり、8000万円がコストだけでかかります。

この8000万円の投資に対して、どれくらいの売り上げ、利益を確保できるのかを予測、説明していくことが必要になります。

ある程度の規模の新規事業を企画するには、ビジネスプランの作成だけでなく、関係部署の合意や役員クラスに承認を得ることが必要になります。ここで、8000万円の投資を認めてもらうためにはどうしたらよいでしょうか?  「メディアで盛り上がっていくから」「Linuxが好きだから」だけでは、多くの人を説得できることはありません。

ビジネスプランに記述しないといけないことは、売り上げ目標だけではなく、「どうやって、売り上げを伸ばしていくのか?」「利益目標」「スケジュール」「競合分析」など多数の項目が含まれます。

ここでは、まず売り上げから見ていくことにします。

8000万円の投資をするには、Linuxサーバーの販売価格が40万円とすれば、200台販売すると、8000万円の売り上げとなり、大丈夫と考えればいいのでしょうか(40万円x200台 = 8000万円) ?  もちろん違いますね。

ここで考えなくてはいけないことがいくつかでてきます。コストの計算方法だけでなく、

 ◆ 販売されたサーバーがLinuxサーバーであるとは、どうやってわかるのか?
 ◆ サポートのエンジニアは、ハードウェア担当をさすのか、ソフトウェア担当をさすのか?

など、疑問がでてくることが多数あります。

特に、「販売されたサーバーがLinuxサーバーであることの証明」が一番困難です。はっきりと、案件ひとつ、ひとつが把握できる規模であれば、もちろん大丈夫です。しかし、x86サーバーが年間50万台以上を販売する規模において、案件ひとつひとつをすべて把握することはできません。

従来から、x86サーバー市場においては、圧倒的なWindows Server シェアがあります。そして、Windows Server OSの売り上げは、マイクロソフト社が発表しますし、また、マイクロソフト社代理店でも大きな売り上げがあります。そのため、実際のWindows サーバーのビジネス規模を、具体的な金額実績を基にして、説明することは可能でした。

しかし、Linux サーバーの場合は、そういうわけにもいきませんでした。例えば、みなさんが、この数年大人気であった2万円を切る低価格サーバーを購入し、自宅で無償のLinux を利用しているか?  それとも別途購入したWindowsをインストールするかを、ベンダーに報告しているということは、ほとんどないと思います。そのためベンダーには、あなたがどのOSをインストールして使っているかを把握することは不可能です(サンプリング調査などの統計を使うことなら可能ではありますが)。

当時は、多数の無償Linux ディストリビューションが人気があったり、メディアに焼いたディストリビューションは有償販売されても、Webにあるものは無償でコピーして、利用可能という状況があり、ユーザーが、どこからOSを入手し、何をインストールしているかわかりませんでした。そのため、サーバーベンダーにとって、Linuxビジネスの把握ということはできませんでした。

前回紹介したような調査会社のレポートを使って、x86サーバーの20%がLinuxであるから、自社のサーバーの売り上げが100億円だとすると、

   Linux サーバービジネスは、20億円です!

と説明したいところはあります。しかし、残念ながら、20%がLinuxサーバーであるということに対して経営層が納得しない、あるいは納得しにくいという問題がありました。理由は、Windows Serverが圧倒的なシェアを持っていたことによるサーバーOSはWindowsという思い込みや、上記のように本当にそのサーバーでLinuxが動作しているかということの完全な把握ができないことであり、十分に説得力のある説明をするには、かなりの労力が必要でした。

では、何をきっかけにして、Linuxビジネスが変わっていたのでしょうか?

次回をお楽しみに!


 
 

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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