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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.3

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

 

前回は、Linuxビジネスの当初の最大の課題が、「どのようにビジネス結果を図るか」であると紹介しました。

今回から数回にわたり、その課題を解決する要因になった出来事を紹介していきます。

■ Red Hat Enterprise Linux の登場

現在、企業向けLinux OS として、圧倒的なシェアを獲得しているのが、レッドハット社によって、開発、販売、サポートが提供されているRed Hat Enterprise Linux (RHEL)です。

2002年3月26日に、はじめてのRHELのバージョンである 2.1 がリリースされました。それまで、レッドハット社は、無料で使える Red Hat Linux (RHL)を提供していました。このRHLは、サポート期間が短いなど、企業システムで活用するには十分な機能や体制がありませんでした。しかし、すぐれたパッケージの管理機能の提供や、無償でダウンロードして使用できることもあり、世界的に人気の高いディストリビューションでした。

Linuxを企業システムで使いたいというニーズの高まりから、レッドハットは、それまでの製品戦略を変更しました。それまでのRHLが持っていた長所を生かしつつも、問題解決に対するサービスレベルの明示、長期サポートの提供など、企業や政府が期待する高度なサポートを含む製品として、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)を提供することになったのです。

【余談】
 Red Hat Enterprise Linux の略称として、RHELを使うことが多いと思います。 その場合、「RHEL」 をなんと発音しますか?  私の経験上、「アール・エイチ・ イー・エル」と呼んでいる人が多数でした。しかし、レッドハット社の人は 「レル」 と発音しています。


■ 2003年当時のLinux ディストリビューション市場

RHELリリース後、ビジネスモデルは変化していきます。それについて述べる前に、まず、サーバーベンダーから見たLinux ディストリビューションについて、少し説明しましょう。

以下に記述する内容は、現在も、Linuxを採用する企業にとって非常に重要なポイントです。

2003年のころは、現在SUSE Enterprise Linux を販売するノベルが日本市場に参入する前であり、国内では、主に3つの有償Linuxディストリビューションに人気が集まっていました。それらは、Red Hat Linux、TurboLinux、MIRACLE LINUXです。それぞれ、レッドハット社、ターボリナックス社、ミラクル・リナックス社が開発、販売、サポートを提供していました。
また、現在も人気のあるDebianをはじめとした無償のLinux ディストリビューションも存在していました。

日本では、コミュニティが開発し提供している無償で使用できるディストリビューションを、フリーLinux と呼ぶ場合が多いですが、HPでは、コミュニティLinuxと呼んで、フリー(=ただ、無償) という言葉とは区別していました。無償で入手できるが、サポートは有償であるディストリビューションも存在するので、今後は、コミュニティLinux と記述することにします。

ディストリビューションごとに、熱心なユーザーを獲得していたことから、営業現場からは、担当するLinux案件を獲得するために、「xxx」というディストリビューションをサポートして欲しいという要望が、切れ目なく入ってきました。

サーバーベンダーにとって、「サポート」という言葉は、非常に重い言葉です。
サポートというと、

  ◆ あなたの人生をサポートします。
  ◆ あなたの体調をサポートします。
  ◆ サッカー日本代表をサポートします。
  ◆ この案件を獲得するために、チームをサポートします。

など、いろいろな使い方をします。そして、サポートというと、保守サービスのように思っている人も多くいます。しかし、サーバーベンダーからすると、多くの場合、「サポート」とは、まずその製品の動作認定するかどうかということになります。

OSの動作認定には、主に2つの活動があります。ひとつは、OS開発企業による動作認定プログラムです。一番有名なものは、マイクロソフト社のWindows Server Catalog です。マイクロソフト社が規定した認定プログラムを実施して申請することで、http://www.windowsservercatalog.com/ に掲載されます。これらの動作認定プログラムで認定されるには、1サーバーあたりxxドルといったコストが発生します。
もうひとつは、サーバーベンダーが社内で実施する製品出荷に対する動作テストです。この場合、単純にOSの動作確認テストだけでなく、簡単なシステムを構築し、組み合わせ検証を実施することが多くあります。さらに、OSの動作を認定するということは、そのサーバーベンダーが提供する各種の周辺システムの対応の確認も含みます。一番わかりやすい対応としては、周辺機器に対するドライバ提供やハードウェアのヘルス状況を確認するエージェント類です。これらの作業費用には、大きな金額が発生します。
また、一度販売開始した製品は、数年にわたり、保守サービスを提供する必要があります。そして、いったん保守サービスを提供すると、たとえ製品の販売終了をしたとしても、その後数年にわたり、サポートを継続していかなければなりません。これは、人によるサービスの提供を意味しており、長期にわたる人の確保が必要となるため、慎重な対応が求められます。

ところで、コミュニティLinuxは動作認定を実施する仕組みがないために、上記のような作業は実施できません。
そのため、サーバーベンダーは、動作認定を実施するLinuxディストリビューションについては、十分に検討し、決定してきました。そして、ほとんどのサーバーベンダーは、当時、Red Hat Enterprise Linux と SUSE Enterprise Linux を中心に動作認定することにいたりました。

通常、サーバーベンダーの動作認定情報はウェブで公開されています。
例えば、HP社のサイトを確認してみましょう。

◆HP社の動作認定OSと対応機種について
  http://h18004.www1.hp.com/products/servers/linux/hplinuxcert.html

ここで、注意するポイントは、「HP Supported」と「HP Supported & OS Partner Certified/Logo」という規定です。つまり、「HPはサポートしているが、OSベンダーは動作認定していない」機種と、「HPも、OSベンダーも動作認定している」機種があるのです。サーバーベンダーは、さまざまな理由から、出荷しているサーバー機種の一部に対して、OSベンダーの動作認定テストを提出していない場合があります。
そのため、例えば、現時点(2010年10月10日)HP ProLiant ML110 G6 でのRHEL使用について、レッドハット社に確認すると「動作認定サーバーではありません」という回答がきますが、HP社に確認すると「動作認定されています」という回答がきます。
このような差異が生まれる一番の理由は、サーバーベンダー内ではテストを実施終了しているが、OSベンダーでの最終の確認作業が終了してないというケースです。
したがって、サーバーを購入する際には、動作認定OSがリストされたウェブを十分に確認することをお勧めします。アプリケーションの動作が古いバージョンでしかサポートされていないのに、間違って最新のサーバーを購入してしまうと、動作しないという問題が生じます。私自身、いろいろな回避策を検討して支援した経験が多数あります。

さて、今回は、サーバーベンダーのサポートとOSの動作認定について簡単に説明しました。
次回は、いよいよRHELがもたらしたLinuxビジネスモデルについての説明です。
お楽しみに。
 

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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