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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.5

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

「Linuxビジネスの作り方」VOL.5

 

前回は、ホールプロダクトについて考えました。今回から、Red Hat Enterprise Linuxをコアプロダクトとして、ホールプロダクトを構成する要素を掘り下げます。


コアプロダクトを Red Hat Enterprise Linux とした場合のホールプロダクトをもう一度リストアップします。

   □周辺製品・サービス
      サーバー
      構成支援
      インストール
      設置
      電話保守サービス
      教育

サーバーについては第3回に取り上げているので、今回は構成支援から考えます。

■構成支援

ビジネスの可視化という観点からは、構成支援サービスは非常に見えにくいものです。なぜなら、通常、製品を販売していく上では、構成が組める(動作する)ことが必要条件です。そして、構成が組めたからといっても、販売が伸びるという十分条件ではありません。さらに、「構成を支援すること」では、顧客やパートナーから費用を得ることが通常はできません。

Red Hat Enterprise Linux 2.1 がリリースされたころは、まだドライバーや使用するオプションによって、本当にインストールできるかどうかでさえ、わかりにくい時代でした。そのため、使用するディストリビューションが購入予定のサーバーにインストール可能であると事前に確認できることは、大きな購入動機になっていたほどです。

もちろん、製品を販売しているベンダーから見ると、「出荷前にテストをしているから、動作するはずだ。」と思っています。しかし、x86サーバーの場合、標準品を組み合わせて構成するために、ちょっとした部品の細かい違いで、動作しない構成が発生することがあったのです。

この動作しない構成には、簡単なカタログスペック上に現れないものがあります。例えば、Red Hat Enterprise Linux 2.1 とサーバーA の構成は、動作するとウェブに掲載されているとします。しかし、インストールしてみると動作しなかったとします。問題を調査すると、ディストリビューション付属のドライバーでは動作せず、サーバーベンダー提供のドライバーだと動作することが原因だったります。このような梱包したベンダーの違いによるドライバーによる不具合は、通常カタログには掲示されません。

特にRed Hat Enterprise Linux 2.1がリリースされたころは、構成が不適切な場合には、回避手段が存在しなかったり、回避できても解決に非常に時間がかかる、ということもよくありました。回避手段がないと、不適合販売だということで、顧客から代金をいただけない場合も発生しますし、解決に時間がかかる場合は、作業するエンジニアの工数費用がかかり赤字になるかもしれません。

そのため、当時は、日本でLinuxサーバーを販売するために、事前の動作検証を念入りに実施し、その情報をウェブを中心に展開することで、問題の発生を排除するように努力しました。このことは、米国の状況から見ても非常にユニークであり、ほとんど日本以外では見られない特徴です。

一般的に、うまく動作しない場合の注意点を含む事前検証の結果を公開することに対して、ネガティブな反応を示すマネジメント層も存在します。しかし、顧客、システムインテグレーターから見ると、「安心して導入できる」「安心して提案できる」という大きなメリットがあります。また、情報を提供する企業から考えれば、何度も同じような質問に対応しなくて済むため、「販売活動に注力できる」というメリットもあります。つまり、不要なコストを使う必要がなくなります。

例えば、当時のRHELは、コアダンプを取得するには、netdumpという機能を使いました。この機能は、ダンプ採取するとき、ネットワークを経由して実行するという特徴を持っていました。そのため、この機能を使用するには、あらかじめダンプファイルを保存するサーバーをネットワーク上に配置する必要がありました。また、ダンプファイルの容量が大きい場合は、ダンプファイル取得中にネットワークの帯域を圧迫するために、業務ネットワーク以外に管理用のネットワークを経由する設定にしておくことが必要でした。つまり、これらの情報を事前に知って、システム構成をしなかったために、後から、ダンプファイルを保存するサーバーを金銭的な理由から設置できなかったり、あるいは、ネットワーク構成の変更をできないために、問題発生時にその解決の手助けとなるコアダンプを採取できない場合もあったのです。

これらの情報は、確かにシステムインテグレーション時にエンジニアが、ノウハウとして、設計することが望ましいのかもしれません。しかし、第1回で述べたように、年間60万台程度のx86サーバーが出荷される状況において、Linux以外のシステムも構築する必要のあるすべてのエンジニアが、あらゆることを把握し続けるということは、現実的ではありません。特に、間接販売を主体する企業にとっては、多数のパートナー企業からの問い合わせに対応しきれなくなってしまいます。

そのため、インテグレーションに必要な基礎情報を事前に提供することにより、自社の製品やサービスを購入、あるいは提案してもらう動機付けになると考え、日本ヒューレット・パッカードでは、構成に必要な情報をウェブ経由で多数発信してきました。今は、ほとんどのサーバーベンダーは、このような情報を提供することが一般的なっています。

[参考]  Linux技術情報サイト
■NEC
  http://www.express.nec.co.jp/linux/index.html
■日本IBM
  http://www-06.ibm.com/jp/domino01/mkt/cnpages7.nsf/page/default-view-alldoc?Open
■日本ヒューレット・パッカード
  http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/linux/mainstream/


このような活動を継続するには投資が必要です。ビジネスの可視化の観点からは、情報を提供しない場合に発生する損害と、情報提供することによって得られるコスト削減などを明確にし、マネジメント層からの支持を得る必要があります。また、これらの検証作業を実施する部署でも、常に、「だれが」「なぜ」「いつ」「どのようにして」、実施するかを考えなければなりません。

現在では、Red Hat Enterprise Linux のビジネス規模が大きくなった関係から、構成時における問題の発生は非常に少なくなりました。そのため、今後の構成支援活動は、単純な構成の検証だけでなく、いろいろな切り口で情報を提供する必要がでてくるでしょう。例えば、クラウド基盤を作る場合の検証やノウハウの提供、あるいは、日々サービス部門に電話でかかってくるFAQのような、マニュアルだけでは記述できないようなことがらを共有していくことが必要になってくるのではないでしょうか?

新しい切り口での、顧客やシステムインテグレーターへの支援を期待します。
では、また。次回をお楽しみに。
 

 

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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