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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.8

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

「Linuxビジネスの作り方」VOL.8

 

引き続き、Red Hat Enterprise Linuxをコアプロダクトとして、ホールプロダクトを構成する要素を掘り下げます。

コアプロダクトを Red Hat Enterprise Linux とした場合のホールプロダクトをもう一度リストアップします。

周辺製品・サービス

  • サーバー
  • 構成支援
  • インストール
  • 設置
  • 電話保守サービス
  • 教育

今回は、電話保守サービスについて考えます。

■ 電話保守サービス

電話による製品の保守サービスは、コンピュータ関連製品のサポートサービスの中心となるものです。
製品が使用する状況に応じて、標準時間サポートまたは24時間サポートの体制を構築することになります。VOL2で述べたように、特に24時間サポートの体制を構築するには、少なくとも5人以上の要員確保ができない限りは、サービスを提供することはできません。(電子メールやウェブを使ったサポートサービスも提供する場合でも大きな差は発生しません。)

後述するように、電話保守サービスを提供するには、コスト面だけでなく、要員確保を継続的に実施する必要があるため、慎重に計画する必要があります。

例を使って考えましょう。

5人の要員を確保し、電話保守サービスで利益を確保するためには、少なくとも5人分の人件費の売り上げが必要になります(さらに加えて、コール管理システム費用や施設代などが必要です)。例えば、人件費の費用を1人あたり1000万円とします。その場合、年間で必要となる費用は、5000万円になります。製品一つあたりの電話サポート料金が、年間10万円とすると、年間500セット以上の販売が必要となります(正確には、いろいろな経費や法定費用などもかかるので、それ以上の販売が必要です)。しかし、新しいソフトウェア製品を使った企業向けのシステムを初年度から500セットを販売することは、容易ではありません。

そして、たいていの場合、新製品は不具合が多く、対応する時間が長くかかってしまう傾向にあります。たとえ5人で体制が構築できていたとしても、全員がずっと障害対応にかかりっきりになってしまうと、他の顧客への対応が遅れがちなったり、対応している5名のモチベーションも下がってしまいます。

また、製品サポートの課題の1つは、いったん製品をリリースすると数年間にわたるサービスを提供し続ける必要があることです。今回の例であるRed Hat Enterprise Linuxは、現在製品サポート期間が7年にわたります。場合により、10年間のサポートも提供されています。たとえ、製品の販売が終了したとしても、販売終了後数年間はサポートサービスを提供し続ける必要があるため、そのための要員を確保し続ける必要があります。つまり、7年間だと少なくとも3億5000万円の売り上げが必要になるのです。

他にも、要員への製品トレーニングをどのように実施していくかなども考えなければなりません。

このようなことを総合的に検討し、製品のサポート要求を考慮して、どのような体制を構築するかを決めることになります。

 

【余談】
「標準時間サポート」は、企業によって、窓口対応の時間に差があります。米国では、12時間(例えば午前8時から午後8時)サポートであることも多くあります。日本では、標準時間サポートは、俗に9時‐5時サポートとも言われます。しかし、開始時間が、8時30分の場合もあれば、9時30分といった場合もあり、固定されているわけではありません。最近は、日本の企業間でも、企業の買収・売却が実施されることが多くなりました。その場合、どちらの企業のサポート時間を標準にするのかなどを考えることも必要です。日本の大企業では、組合との労働時間の協議が必要となる場合もあり、簡単に時間を変更できない場合もあります。一度、各社の電話サポート窓口対応時間を、海外の窓口も含めて比較するといいかもしれません。

 

顧客が電話保守サービスを活用するときは、いくつかのポイントを理解しておくと、より効率的にサービスを受けることが可能になります。

あまり大きく取り上げられないですが、一番のポイントは、
「慣れること」
です。

そもそも、一般的に、一度も顔を合わせたことがない人に、電話で現在の状況を的確に伝えることは、容易ではありません。特に、初めて窓口に電話するとき、大きな障害が発生していてすぐに解決しなければならないと焦っている場合は、きちんと状況を伝えられないことがありがちです。このようなことにならないために、おすすめの一つは、障害対応が起きてから初めて電話をかけるのでなく、ちょっとした調べ物をするときに、何度か窓口を活用しておくことです。通常、電話保守サービスのサービス内容には、ヘルプデスクサービスが入っており、使い方などの問い合わせをすることが可能です。最近、エンジニアの方は、Googleの検索エンジンを使って、自力で情報を調べるという傾向にありますが、せっかく、有償で電話保守サービスを購入しているのですから、窓口の人に調べてもらうのも一つの手だと思います。

次に必要なことは、電話をかける前に、保守に必要となる情報を準備しておくことです。例えば、現在使用している環境を確認しておくことは必要です。

  例. サーバー名、使用OSバージョン、動いているアプリケーション、再現手順など

特に、一番重要なポイントは、現象が再現できるかどうかです。障害が発生し、再現手順が確認できる場合は、ぜひあらかじめメモなどを取っておいてください。現象が再現しない場合でも、緊急の対応を求められる場合がありますが、残念ながらすぐに対応することはとても困難です。そのような場合でも、判明している条件や現象で原因がわかる場合がありますので、いろいろな情報を伝えるようにしてください。

さて、次回はホールプロダクトの最後の「教育」です。
では、次回をお楽しみに。

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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