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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.9

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

「Linuxビジネスの作り方」VOL.9

 

今まで説明してきた、Red Hat Enterprise Linuxをコアプロダクトとしたホールプロダクトを構成する要素の最終回として、教育を取り上げます。

自社製品を販売、推進していくには、その製品に対する教育を、自社エンジニアだけでなく、ユーザー企業やパートナーに対しても提供してく必要があります。そのためには、自社製品の教育トレーニングなどを開発していかなければなりません。

ただし、今回コアプロダクトとしたRed Hat Enterprise Linuxについては、レッドハット社あるいは認定トレーニング機関で教育が提供されているため、トレーニングコースを開発する必要はありません。このような場合に実施しなければいけないことは、自社のエンジニアに対する、つまり、今まで紹介してきた、構成支援、インストールサービスや電話保守サポートを実施しているエンジニアに対するRed Hat Enterprise Linuxの教育です。

さらに、OSについては、動作させるサーバーに関する知識も必要となります。そのため、少なくとも使用するサーバーベンダーの認定資格も取得しておくと役に立つため、その教育も必要となってくるでしょう。

教育には、かなりの投資が必要となります。というのも、ベンダーが提供する認定資格は、ほとんどの場合、有償で提供されているからです。さらに、その認定資格を取得するためには、事前に有償のトレーニングを受けることが必要になる場合も多々あります。そのため、資格を取得させるために必要となる投資は、かなりの金額となります。

レッドハット社の認定プログラムは、以下のサイトに説明があります。

 ■ レッドハットの認定資格プログラム
http://www.redhat.co.jp/training/

通常、RHELを知っているエンジニアとしての基本的な資格は、Red Hat 認定技術者(RHCT)とRed Hat 認定エンジニア (RHCE)といえると思います(注: この認定技術者と認定エンジニアという日本語名はわかりにくいと思います。そのため、以下は、RHCTおよびRHCEと記述します)。

株式会社 富士通ラーニングメディアが提供しているRHCTおよびRHCEのコースの受講料は、次のようになります。(http://www2.knowledgewing.com/course/cd?c=UMV01L 参照)

 ◆ RH133 RHEL システム管理コース+RHCT認定試験/5日間
  299,250円(税込)

 ◆ RH300 RHCE速習エキスパートコース+RHCE認定試験/5日間
  346,500円(税込)

 

この金額を参考にすると、社内で50人のRHCEレベルのエンジニアを教育する場合、少なくとも、2000万円程度の投資が必要となるということになります。それに加えて、ハードウェアベンダーのサーバー認定資格の取得費用まで含めれば、相当の金額に達します。VOL8では、電話サポートに従事するエンジニアの人件費の考え方を紹介しました。そのときは、単純なコストだけで計算しましたが、それ以外にも、このような教育に関する投資が必要になってくるのです。

また、5日間のトレーニングということは、1週間ずっと、受講するエンジニアが現場を離れるということを意味します。そのため、通常の仕事を調整した上で受講することが必要となります。よって、製品を販売してく上では、売り上げ目標以外に、リソース計画も必要になります。

そして、認定資格を取得できればそのまま体制が維持できる、というわけではありません。通常、数年に一度、ベンダーは製品をバージョンし、それに対応した認定資格を提供します。必要に応じて、新しい認定資格を取得することも必要になってきます。また、新しいバージョンに対応した認定資格は、新製品のリリース後、すぐに提供されることはほとんどありません。したがって、新バージョンのリリース前にベンダーが開催するテクニカルセミナーに参加し、事前に情報を入手することも必要です。

これらをすべて理解した上で、体制を構築、維持していく必要があります。つまり、ビジネスを立ち上げるには、売り上げ目標の合意だけでなく、リソース計画を含めたうえでの事業計画が必要となってきます。

最後に、視点を変えて、レッドハット社の認定資格の課題やIT資格の取得のメリットについて、考えてみたいと思います。

◆ レッドハット社の認定資格の課題

日経コンピュータ(2010年11月10日号) に、「市場価値のある資格はこれだ!」という特集があります。
(現在、ITProに主な内容が掲載されています。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20101221/355528/?ST=selfup&P=1)

ここで興味のひく点は、レッドハット社の認定資格は、

  ユーザー企業のシステム部長がITベンダーの技術者に「取得してほしい」資格に
  入っているが、ITベンダーの人事担当者が自社の技術者に「取得させたい」資格には、
  入っていない

ということです。

つまり、ユーザーは求めているのに、ITベンダーはその要望を理解してないということになります。上位を占めたのは、いつものように日本オラクルと日本マイクロソフトの認定資格です。この2社は、いろいろな機会を通じて、ITベンダーに自社の認定資格のメリットなどを伝えているのだと推測します。ビジネスの体制を作っていくときに必要であっても、市場で価値があまりないと思われている資格に対しては、マネジメント層からの投資が得難くくなります。レッドハット社にはぜひ認知度向上を頑張ってほしいところです。

■ IT資格の取得のメリット

IT資格の取得のメリットには、どういうものがあるのでしょうか?
一般的には次のようなことが言われています。

 ◆ 給料がアップ
  企業の中には、資格取得者に対して、資格手当を設けているところがあります。
  資格手当がない場合でも、報奨金のような形で対応している場合もあります。

これは、目に見える形で一番わかりやすいメリットです。

 ◆ 就職・転職に有利
  昨今の就職難や雇用の流動化を考えれば、少しでも自分をアピールするものが
  必要となります。そのとき、履歴書の資格欄にいくつかの取得資格を記入
  することができると、アピールする材料になります。

しかし、就職・転職のための資格取得には、昔からいろいろな議論があります。

ベンダーの認定トレーニングおよび資格試験はレッドハットを含め数多くありますが、その費用は、大抵、これから就職する学生が個人で負担するには高額すぎます。学生が取得を検討すべきLinux関連資格としては、非営利団体LPIが提供する認定資格「LPIC」(Linux ProfessionalInstitute Certification)が適切かもしれません。LPICはこのLinux技術力の判断基準として国際的にみとめられている資格です。

企業からすると、転職に有利な資格と思ってしまうと、自社のエンジニアには取らせたくないかもしれません。しかし、資格を取ることでエンジニアのモチベーションを高めたり、ビジネスを強化できる場合もあります。戦略に合わせて教育投資を考えていく必要があると思います。
また、個人的には、以下のようなケースには、企業として投資を考えて欲しいと思います。

 ◆女性が産休や育児休職を取った場合、長期の介護休暇や病気休暇を取った場合
  このような場合、最新の技術情報から遠ざかっていることが多いでしょう。
  復職するときに、認定トレーニングと資格をとることで、効率的に勉強できるため、
  現場にキャッチアップしやすいと考えるます。

今回は、教育について、考えてみました。

では、次回からは、マーケティング活動について、掘り下げていきます。お楽しみに。

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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