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Home 特集 コラム 赤井 誠の「Linuxビジネスの作り方」 「Linuxビジネスの作り方」VOL.11

赤井誠の「Linuxビジネスの作り方」

「Linuxビジネスの作り方」VOL.11

 

今回から、プロモーションについて、説明していこうと思っていましたが、少し前まで説明していました人材育成について、5月22日に、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)から、「IT人材白書2011」http://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/about.html が発表されましたので、その内容を踏まえて、今回は、IT業界におけるキャリアとオープンソース、Linuxビジネスでの課題について、考えてみたいと思います。

キャリアに関する情報や施策については、すべての社会人に共通する課題に対処するものや、IT業界特有の課題に対処するものがあります。
今回の白書では、もちろん、IT業界特有の課題について分析されたものです。
特に、次の4つのポイントを中心に調査されています。

 ①グローバル化するビジネスに対するIT技術者の意識とその人材育成
 ②IT産業を牽引できる突出した人材の育成と活用
 ③女性の積極的な活用にみられる多様な人材の活用
 ④IT人材のキャリア支援施策

このコラムでは、特に、人材育成やキャリア支援施策のパートにフォーカスして考えたいと思います。

◆ 企業の人材育成戦略が社員に届いていない

「IT人材白書2011」の後半になりますが、気になる点があります。それは、次の部分です。

企業が将来ビジョンに基づく人材育成戦略を社員に示していても、実際に所属するIT人材がその人材育成戦略を認識している割合は、半数程度にとどまることが明らかになった。(『「IT人材白書2011』 304p)

白書の図Ⅱ-4-38で、企業と社員との認識の差が一番大きいものは、次の3つです。

  ■ 人材育成に関する全体方針       ( IT企業 47.3%、IT技術者 26.0%)
  ■ 育成の取り組みに関する実施計画 ( IT企業 34.0%、IT技術者 15.1%)
  ■ 育成のための具体的な手段・方法 ( IT企業 32.1%、IT技術者 19.5%)

カッコ内の数字は、IT企業が人材育成について発信しているそれぞれの項目についての割合と、それらをIT技術者が認識している割合を示します。例えば、「人材育成に関する全体方針」について、IT企業の人材育成に関する全体方針を公表している割合は、47.3%にも関わらず、IT技術者のうち 26.0%しか、その方針を理解できていないということになります。
また、IT技術者が「自分の将来キャリアが不安である」と感じるのは「どちらかというと」を含めると69.0%にもなります。(『「IT人材白書2011』 295p) 
IT企業の経営者から見ると、キャリアに対して不安を感じる前に、まず、自社の人材育成に関する全体方針や育成計画・方法について、理解をしてもらいたいという気持ちも強いと思われます。

この状況は、労使双方から見ても、非常に悩ましい状況であるかもしれません。

◆ 企業の人材育成戦略の背景にあるもの

IT企業が自社の人材戦略を公表したり、IT技術者が不安を抱えている背景には何があるのでしょうか? それは、IT産業が、今、オフショア開発を含むグローバル化の進展、クラウドコンピューティングの台頭など、産業構造が大きく変化してきていることがあると言えるかもしれません。

そのような構造変化の中で、いち早くグローバルでの共同開発体制やコミュニティを構築したものの一つであり、また、多くのパブリッククラウドでの中核となっているテクノロジーであるものがオープンソースであることに、異論をはさむ人は多くはないと思います。

そのようなオープンソース活動とキャリアについて、何か動向を探ることができないかと思い、試みてみました。

今や、日本最大のオープンソースのイベントとなった 『オープンソースカンファレンス』(OSC) が、昨年9月に50回の開催を迎えました。以前の仕事の関係で、そのほとんどの開催に参加した経験から、一度、それまでの活動を調査したら面白いと思い、分析を開始しました。

□ オープンソースカンファレンスとは?

オープンソースカンファレンス(OSC) は、2004年9月に、次のような目的で開始されました(参照: http://www.ospn.jp/

  - オープンソース コミュニティの『活動成果』の発表の場を提供
  - 開発者とユーザーの『出会いの場』の提供
  - ビジネスチャンスの創出
  - 企業・コミュニティ・その他グループの緩やかな連動
  - OSSの今後をよりよくしていくための試みを考える

現在、年間6000人、参加団体400団体を超える国内最大のオープンソースイベントに成長し、北は北海道、南は沖縄まで全国規模で開催されています。

50回の開催内容を振り返ると、出展コミュニティ、人気セミナーの内容や支援する団体は、その時々のトレンドを反映したものとなっています。例えば、当初は、「仮想化」というキーワードはありませんでしたが、今や欠かすことができない内容となっています。

また、OSCが開始され始めたころの記事やセッション内容を見ると、オープンソースをビジネスとしてやっていくことで、「食べていけるのか?」という題が散見されます。
例えば、第1回OSCの日経ITPro の記事で、以下のことが紹介されています。

「IT人材白書2011」の後半になりますが、気になる点があります。それは、次の部分です。

◆ 国内のオープンソース・コミュニティ 20組以上が結集
    http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20040904/149464/

   「オープンソースとビジネス」と題するパネル・ディスカッションが行われた。

   「オープンソースで食べていけるか」という命題に対し,テンアートニ 代表取締役 喜多伸夫氏は「テンアートニは8月に東証マザーズに上場することができた。Linuxは利益の出るビジネスができるようになった」とコメント。ただし「Linux以外のオープンソース・ソフトウエアはまだ難しい面もある。特にデスクトップは難しい」と指摘した。
    (略)
 「コミュニティの技術者の報酬」というトピックでは,ミラクル・リナックス 取締役技術本部長の吉岡弘隆氏が,ボランティアだけでは限界があると指摘した。「開発スピードを上げるには,フルタイムの開発者を雇用するが必要がある。また工数の9割はテストであり,品質面からもフルタイムの開発者が力仕事をやることが必要」(吉岡氏)。日立製作所の日立製作所システム開発研究所 研究員(現在、横浜研究所 研究主幹) 杉田由美子氏も,Linux Kernel Sumittの参加者の状況を知る経験から「カーネル開発者の多くが米IBMや米Hewlett-Packardに雇用されている」と,オープンソース開発者の経済基盤の必要性を指摘した。

つまり、2004年当時は、Linuxは、ビジネスとして食べていけるようになってきたが、それ以外のOSSは厳しいこと、また、日本では、オープンソース開発者の経済基盤がぜい弱であったことがうかがえます。

2004年から数年間は、Linuxサーバーが毎年二ケタ以上の成長を記録しました。そのため、急激に、「オープンソースで食べていけるか」という命題に対して、「『Linux』では食べていける」という環境が生まれていきました。

その後、さまざまな企業で、MySQLやPostgreSQLなどのデータベースや、RubyやPHPなどのアプリケーション開発基盤が浸透しく中で、「オープンソースで食べていけるか」という話から、「オープンソースを使って、どんな製品やサービスを作っていくか」、すなわち、ビジネスになるような産業環境をどう作っていくかという話にシフトしていきました。

次回は、そのころから、話題になり始めたトレンドを紹介しつつ、キャリアの話を続けていきたいと思います。

次回をお楽しみに。

著者プロフィール

赤井 誠(あかい まこと)
赤井 誠(あかい まこと)

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、HP-UXやHPソフトウェアの開発に従事。その後、マーケティングに移動し、HP製品だけでなく、各種ISV製品販売推進を担当。サービス事業戦略部門を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。ハイパフォーマンス・コンピューティング、VMWare、Microsoft Windows、HP製クラウド管理ソフトウェアのビジネス開発担当を歴任。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など多数。
ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の所属する組織とは何ら関係はありません。

Twitter id:  mktredwell

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