日本OSS推進フォーラムのタスクフォースで検討した議論では、Linuxデスクトップ普及のブルーオーシャンは中小企業ではないか、という意見が検討されました。その理由は、昨今のクラウドサービスの充実化にあります。
クラウドサービスの提供者には、標準的なインタフェースの積極的な採用と、その結果として多種多様なクライアント対応が求められます。特定の環境に囲われた大企業での業務システム構築と異なり、クライアントとしてどのような端末から接続してくるかを想定できないクラウドサービスでは、そのシェアを拡大するために、様々なクライアントに対する接続性を確保しなければならないからです。
多くのクラウドサービスはWebアプリの形式で提供されます。そのインタフェースとしてHTML5による表現の整備が進んできました。HTML5を扱うことができるモダンなブラウザは、過去の反省から標準化を強く意識した実装となっており、あらゆるプラットフォームで同じようにアクセスできるという状況の整備が、以前に比べるとずいぶんと進んできました。HTML5によるインタフェースを提供するWebアプリであれば、Linuxデスクトップでも全く問題なくアクセスすることが可能です。
技術的に不安視されていた日本語入力も、Google日本語入力のLinux版を用いれば、他のプラットフォームにおける日本語入力と遜色ないレベルで日本語の文字列を入力することができます。また繰り返しになりますがLinuxデスクトップの導入は、中小企業ユーザに対するコストメリットの訴求力はおおいにあるといえるでしょう。
ことオフィスで事務処理を行う限りにおいて、ハードウェアの性能に関していえば、3、4年前のコンピュータでも事務処理には十分すぎる能力を持っています。エコ意識の高まりもあり、最近ではリサイクル、リユースPCの活用も普及しています。このようなハードウェアの再利用についても、ライセンス管理の要らないLinuxデスクトップ利用は適しています。
ハードウェアとソフトウェアを合わせて安価に導入できるという点は、もっとアピールされてもよいのではないでしょうか。実際に、首都圏だけでなく地方も含めて、ITコーディネータの方々によるOSS活用の研究が進んでいます。中小企業に対するLinuxデスクトップ導入パスの1つとして、彼らの活躍も期待されています。
次回は、少し視点を変えて、被災地支援活動にLinuxデスクトップを活用した話を紹介します。
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