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Linux.com Japan

Home 特集 コラム 工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」 「よしっ、Linuxで行こう!」VOL3  Linuxの開発に参加している人々

工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」

「よしっ、Linuxで行こう!」VOL3  Linuxの開発に参加している人々

 

筆者も9月27日~29日、六本木アカデミーヒルズで開催されたLinuxCon Japan 2010にボランティアとして参加し、内外の多くの開発者の方々のお話を伺うことができました。今回から数回、LinuxCon Japanで仕入れたネタも併せ、主に日本企業、および、日本人のLinux開発貢献について考えてみたいと思います。Linux開発コミュニティに参加し、Linuxの開発に貢献するためのノウハウは、懇切なホワイトペーパ『Linuxカーネル開発への参加方法(和訳) 』が、また、グローバルなLinux開発コミュニティの視点で見た開発貢献の考察は、ホワイトペーパ『誰がLinuxを開発しているか(第2版, PDF』がありますのでそちらも参考にして下さい。

 

Linuxの開発に参加している人々(1)

既に多くの日本企業がグローバル化している時代に、「日本」の企業の開発貢献を云々するのは時代錯誤の危険もありますが、次のような理由でやはり気になります;

(1)いろいろな産業で世界市場の約10%を占める日本企業は、基幹系ITシステムや情報家電へのLinux適用において、世界的にみても先行しているが、それに相応しい開発貢献を行っているか、

(2)これまで、メインフレームでも、あるいは、UNIXでも、システムの信頼性やきめ細かな使い易さなど、日本市場独特の要件が指摘され、時間をかけてそれらを実装してきたが、Linuxでも同様のことが起きるのか、

(3)日本人あるいは日本企業はオープンソース開発というこれまでにないグローバルな開発活動にうまく溶け込むことができるのか。

先ず、開発貢献に関する情報ソースを紹介します。Linux Kernel Patch Statisticは、Linuxカーネル2.6.12 (2005年6月リリース)以降のカーネルについて、パッチ投稿などによって貢献した技術者、その人の属する組織についての統計です。Linuxのカーネル開発はgit (”ギット”と発音する)と呼ばれるソースコード管理システムによって管理され、一件一件のパッチにチェンジログがつけられています。パッチ投稿者は、そのメールアドレスによって個人が識別され、かつ、ほとんどの投稿者の所属企業・組織もメールアドレスのドメイン名で分かります。上記の統計サイトは、富士通の中国子会社で働くWang Chen氏によって個人的に運営されていますが、Linuxカーネルの改版がリリースされるたびにLinux Kernel Mailing List (LKML)に紹介され、カーネル開発者に親しまれています。誰でも参加可能なLKMLを見ていれば分かることですが、Linuxカーネルの開発は完全にオープンに進められているため、貢献者、貢献企業・組織、貢献内容についても、何一つ隠しだてせず、むしろ基礎科学における論文発表に似た、開発者個人(および、企業・組織)の名誉と信用を高める行為となっています。これは、秘密だらけの商用ソフトのケースとは真逆です。

さて、日本企業・組織の開発貢献を見てみましょう。ホワイトペーパ『誰がLinuxを開発しているか(第2版, PDF』でも紹介されていますが、2005年以降に限ってもLinuxカーネルの開発は、世界の500の企業・組織の5000人に上る技術者の貢献によって行われています。筆者は、Linux Kernel Patch Statisticのデータを参照し、日本企業・組織がLinuxカーネル開発のために投稿し、受け入れられた修正数の合計、および、その上位8社(企業・組織)の内訳を計算し、次の表にしました。ただし、元のデータに対して、筆者が多少、加工しています。例えば、企業名として複数のグループ企業の名前が別々に出ている企業は一つにまとめました。あるいは、日本企業と外国企業の連携プロジェクトに参加したために外国企業のメールアドレスで投稿したという事情がよく分かっているケースでは、所属元の日本企業の数に加えました。また、Hobbyistsと分類されている個人の投稿にも日本人が数人いますが、それらは日本の企業・組織の貢献としては加算していません。

<表>日本から投稿され受け入れられたパッチの数

Linux Kernel Ver.
(Release Date)

Total
(World)

Total
(Japan)

Renesas

Fujitsu

NTT
Group

Toshiba
Group

NEC

SONY

USAGI

Hitachi

Others

2.6.35
(2010-8-1)

9801

421

104

142

94

 

3

 

12

41

25

2.6.34
(2010-5-16)

9443

520

188

120

95

3

22

4

8

43

37

2.6.33
(2010-02-24)

10863

669

130

206

80

14

65

5

4

129

36

SUM(2010)

20306

1189

318

326

175

17

87

9

12

172

73

Ratio

1.000

0.059

0.016

0.016

0.009

0.001

0.004

0.000

0.001

0.008

0.004

2.6.32
(2009-12-03)

10997

588

266

208

55

17

24

3

 

1

14

2.6.31
(2009-09-09)

10881

747

345

225

83

17

20

40

 

1

16

2.6.3
0(2009-06-10)

11984

640

152

243

132

15

33

26

 

 

39

2.6.29
(2009-03-23)

11696

565

168

228

51

14

70

17

 

1

16

SUM(2009)

45558

2540

931

904

321

63

147

86

0

3

85

Ratio

1.000

0.056

0.020

0.020

0.007

0.001

0.003

0.002

0.000

0.000

0.002

2.6.28
(2008-12-24)

9045

597

170

145

72

38

47

15

 

14

96

2.6.27
(2008-10-10)

10625

564

126

170

59

47

18

17

20

5

102

2.6.26
(2008-07-13)

9938

466

53

114

66

46

9

21

86

 

71

2.6.25
(2008-04-17)

12233

614

219

110

75

17

61

55

31

12

34

2.6.24
(2008-01-24)

9831

474

190

58

49

34

23

44

7

5

64

SUM(2008)

51672

2715

758

597

321

182

158

152

144

36

367

Ratio

1.000

0.053

0.015

0.012

0.006

0.004

0.003

0.003

0.003

0.001

0.007

2.6.23
(2007-10-09)

6657

574

156

47

99

77

6

84

27

11

67

2.6.22
(2007-07-08)

6520

309

79

13

19

48

2

27

39

9

73

2.6.21
(2007-04-21)

4996

304

43

25

10

74

2

39

54

8

49

2.6.20
(2007-02-04)

4761

259

56

15

16

37

10

33

10

4

78

SUM(2007)

22934

1446

334

100

144

236

20

183

130

32

267

Ratio

1.000

0.063

0.015

0.004

0.006

0.010

0.001

0.008

0.006

0.001

0.012

2.6.19
(2006-11-29)

6681

395

123

34

15

36

3

6

41

49

88

2.6.18
(2006-09-19)

6323

200

4

71

6

21

27

9

8

4

50

2.6.17
(2006-06-17)

5727

263

10

80

3

35

13

1

34

7

80

2.6.16
(2006-03-19)

5366

126

29

20

3

37

4

2

7

 

24

2.6.15
(2006-01-02)

4959

69

15

5

0

19

2

1

17

 

10

SUM(2006)

29056

1053

181

210

27

148

49

19

107

60

252

Ratio

1.000

0.036

0.006

0.007

0.001

0.005

0.002

0.001

0.004

0.002

0.009

2.6.14
(2005-10-27)

3625

68

2

26

0

3

2

4

8

 

23

2.6.13
(2005-08-28)

3897

33

11

11

1

 

 

 

4

 

6

2.6.12
(2005-06-17)

1725

38

1

20

0

1

 

1

4

 

11

SUM(2005)

9247

139

14

57

1

4

2

5

16

0

40

Ratio

1.000

0.015

0.002

0.006

0.000

0.000

0.000

0.001

0.002

0.000

0.004

この8社に続く企業・組織としては、ミラクル・リナックス、VAリナックス・システムズ・ジャパン、フィックスターズなどがあります。

この表により、日本企業の貢献の推移が分かります。すなわち、2005年には、日本から提出されて、Linuxアップストリームに受け容れられたパッチ数が、Linuxカーネル全体の1.5%程度だったものが、2006年以降、世界全体のパッチ数の増加の中、それ上回る増加率により3%台になり、2007年以降は5~6%台になりました。

次回は、このように日本のパッチ数が増加した要因をLinuxコミュニティや、Linuxの開発をサポートする日本の企業・組織の観点で考えてみます。

お楽しみに!

著者プロフィール

工内 隆(くない たかし)
工内 隆(くない たかし)

2001年以来、富士通にてLinuxの開発および適用を推進、また、LinuxディストリビュータやLinux開発貢献に力を入れる企業間の協業を企画。富士通退職後、2006年にThe Linux Foundationのジャパンディレクタとなり、世界のLinux開発コミュニティと日本のLinux開発者の間の『橋掛け』に傾注。2010年1月、ジャパンディレクタを退き、アドバイザとしてThe Linux Foundationの活動をバックアップしている。

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