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Home 特集 コラム 工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」 「よしっ、Linuxで行こう!」VOL4  Linuxの開発に参加している人々(2)

工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」

「よしっ、Linuxで行こう!」VOL4  Linuxの開発に参加している人々(2)

前回は、Linux Kernel Patch Statisticのデータから日本企業の貢献の推移を説明しました。Linuxアップストリームに受け容れられたパッチ数は、2005年にはLinuxカーネル全体の1.5%程度だったものが、2006年には3%台になり、2007年以降は5~6%台になっているのです。今回は、このように日本のパッチ数が増加した要因について説明します。

日本のパッチ数が増えたのは、もちろん、日本の企業・組織、および、それらにサポートされた日本のLinux開発者の熱意の結果であることはいうまでもありませんが、同時に、Linuxコミュニティの変化や日本以外の国々も含めた企業・組織のLinuxに対するサポートの高まりの要因も見逃すことはできません。パッチ数の増加には以下の要因があったと考えられます。

  1. 2000年前後からLinux自体の開発の方向性が大きく変化し、Linuxが大規模サーバやスパコンから、さらには、産業組み込みシステムまでをカバーするようになり、世界の多くの企業・組織がLinux開発貢献に参加するようになりました。IBMのDan Frye氏が先月のLinuxCon Japanの基調講演の中で、この頃のコミュニティについて、「企業は、コミュニティをコントロールすることはできないが、影響を与えることはできる。」と述べていたように、日本企業にとってもLinuxへの本格的な開発貢献が意味のあるものとして認識されるようになり、コミュニティと企業の協力関係が定着しました。

  2. 2006年3月以来、当時のOSDL(Open Source Development Lab、2007年に現在のThe Linux Foundationに組織変更)が日本のOSDLメンバ企業各社と協力し、Japan Linux Symposiumを開催してきました。世界のLinuxメンテナーを招聘し、彼らと日本の技術者の直接的な交流を定常化したり、あるいは、2000年代初頭からLinuxコミュニティに参加していた慶応大の吉藤さん、当時産総研におられた新部さん、VAリナックス・システムズ・ジャパンの高橋さんなどに講演をお願いして、彼らがLinuxコミュニティに入っていった経験を語っていただきました。このような地道な活動もパッチ数の増加に寄与したものと考えています。

  3. Linuxコミュニティの有力メンバが快く来日して日本の技術者との会話に応じた背景には、その前年2005年にLinus Torvalds氏等をOSDLのフェローとして迎えたり、あるいは、OSDLにTechnical Advisory Board (TAB)を組織し、コミュニティのリーダー達とOSDLを運営するメンバ企業との協調関係が眼に見える形になったことも重要な要因としてあります。このような関係は、現在でもThe Linux Foundationの重要な活動として継続されています。

  4. 日本の開発貢献を考える上で常にあげられる課題として、言語の壁、日本人の遠慮深さ、コミュニティの中での論争への苦手意識、そして説明の弱さがあります。これは、日本の社会の根源的な課題であり簡単に解消できるものではありません。しかし、積極的な参加を継続している技術者を見ていると、数ヶ月くらいのうちにコツをつかんで、慣れてしまうように感じています。最近では多くの日本人開発者がLKML(Linux Kernel Mailing List)に参加しており、定常的にパッチ投稿している技術者も50人近くを数えることができます。実際に参加してみると、技術者同士で交わされる英語は、丁寧なビジネス英語よりも、ザックバランに用件を伝える英語の方が歓迎されること、また、考えを整理したうえで、時間をかけて英語のメールにするやり方は、むしろ日本人に向いているということが分かってきて、敷居が低くなっているのかもしれません。また、LinuxCon JapanのようなLinux開発メンテナーと直接に会話する機会では、技術的な話題の説明には多くの言葉は必要なく、なんと言っても、実装したソースコードが全てを語るということも実感しているように感じます。日本人技術者が英語で発表し、メンテナーに名前を覚えてもらい、さらに、人脈を形成することは重要です。その意味でもLinuxCon Japanのような機会は必要だと考えています。

以上のような背景から、日本の開発貢献は着実に増加しているわけですが、それでも、筆者は、日本の企業の活発なLinux活用状況から見て、開発貢献6%程度というのはまだ物足りないレベルであり、10%に近づいてもいいのではないかと考えています。もちろん、開発貢献10%という数字だけを議論するのは無意味です。日本のITシステムや産業組み込みシステムなどでLinuxの普及が進むことが必要なのです。このような適用分野の広がりが新たな開発要件につながり、それらをLinuxカーネルに実装することにより開発貢献が増え、いろいろな産業で日本企業が世界市場の約10%を占めているように、開発貢献も約10%になるのではないかと思うのです。日本のユーザの厳しい要求は、必ずやLinuxカーネルの更なる拡張・改善となってLinuxを利用する全ての人々の利益になるはずです。

さて、次回は、日本の企業・組織がこのような開発貢献を行う動機、および、開発貢献の結果として得られる利益について見てみたいと思います。
では。

著者プロフィール

工内 隆(くない たかし)
工内 隆(くない たかし)

2001年以来、富士通にてLinuxの開発および適用を推進、また、LinuxディストリビュータやLinux開発貢献に力を入れる企業間の協業を企画。富士通退職後、2006年にThe Linux Foundationのジャパンディレクタとなり、世界のLinux開発コミュニティと日本のLinux開発者の間の『橋掛け』に傾注。2010年1月、ジャパンディレクタを退き、アドバイザとしてThe Linux Foundationの活動をバックアップしている。

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