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Home 特集 コラム 工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」 「よしっ、Linuxで行こう!」VOL7 気持ち良く制約と付き合う その1

工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」

「よしっ、Linuxで行こう!」VOL7 気持ち良く制約と付き合う その1

 

今回から2回にわたり、Linuxやオープンソースソフトウェア(OSS)を利用したり、あるいは開発に参加したりする際に注意する必要がある制約を理解し、それら制約に起因する管理手順を企業・組織内にスムーズに導入する方法について触れてみたいと思います。今回触れる制約はOSSの取り扱いに関するものであり、著作権法、あるいはGPL(General Public License)をはじめとした各OSSの使用契約から生じるものですが、筆者は法務の専門家ではありませんので、本記述は法的な助言や契約の解釈などは意図しておりません。各企業・組織において、法務部門(あるいは、法務問題を担当する顧問弁護士等)や管理部門をいかにLinuxやOSSの活動に捲き込むか、という内容について述べるつもりです。

つい2~3年前まで、特に大企業で、FirefoxやOpenOfficeのようなOSSの利用を制限しているということをよく聞きました。大企業でのOSS利用、あるいはOSSのビジネス適用というのは、やや過剰な制約の下で行われることが多いようです。これに対して、LinuxやOSSに関連したスタートアップ企業は、むしろOSSコミュニティとの関係を生かして、いろいろな制約との間合いを上手に詰めているように思います。

OSSのことをFree and Open Source Software(FOSS)と呼ぶこともあるくらいですから、LinuxやOSSは、商用ソフトに比べてもはるかに自由に利用できるはずなのに、なぜか「GPLは危ない」という声が聞こえます。これは、校則の厳しい学校では映画を見に行く自由がないのに、緩やかな学校では一定のルール・制約の下で映画を見に行くことが許されているようなものです。校則の緩やかな学校の生徒はルール・制約を理解する必要があるのですが、中には「映画はあぶない」と言って自主規制する生徒もいるでしょう。同様に、Linuxを含むOSSでは、一般に、商用ソフトでは厳しく制限されている、あるいは、全く許されていない複製・再配布や改変の自由が、一定の制約のもとで許されているのですが、商用ソフトしか扱った経験のない人には、制約を理解するよりも、過剰な自主規制を選んでいるケースもあるわけです。OSSの自由を享受し、さらに、ビジネスに活用するためには、まず、制約のことを理解しなければなりません。

さて、本コラムのシリーズの第2回目に、「Linux活用3段活用説」を提案しましたが、LinuxやOSSの利用に関わる制約は、この活用レベルによって違います。その対応を簡単に述べると次のようになります。

活用レベル 意味 対応
1段活用 エンドユーザとしての利用 ・ソフト利用のリテラシーとして、商用ソフトとOSSの両方について、制約・特徴などをキチンと教育する。 ・情報システム管理者は、GPLなどのOSSライセンス事項を十分に理解することが必要。
2段活用 ビジネスに活用 ・ビジネスに関わる全ての従業員が、GPLなどのOSSライセンス事項を熟知することが必要。
3段活用 コミュニティに参加 ・先ず、企業におけるソフト開発技術者としてのリテラシーが必要。
・加えて、GPLなどのOSSライセンスの理解。


少し詳しく考えてみましょう。

先ず、1段活用、すなわちエンドユーザとしてのLinux/OSSの利用に対する制約ですが、少し広く見てみると、商用ソフトであろうと、OSSであろうと、著作権の放棄が明示された例外的なソフトを除けば、使用に関して何らかの制約が伴っていると考えられます。一般的に商用ソフトの方が、その使用契約において複製を禁止するなど、はるかに強い制約を伴っており、また、違反に対しても強硬なペナルティが課されます。したがって、多くの企業において、ソフトの導入に責任を負う情報システム管理者は、商用ソフトの管理に大きなエネルギーを割き、法務部門等の助言に従い、社内の商用ソフト利用の管理方法を定めているでしょう。しかし、近年のように、Windows環境においてさえOpenOfficeやFirefoxのような優れたOSSが普及し、また、WebサーバなどにLinuxを使うのが普通の状況にあっては、OSS利用に関しても、一定の管理方法を定めることが望ましいでしょう。そしてそれは、商用ソフトとは異なったレベルのものになるはずですが、エンドユーザとしてのOSS利用に過剰な規制をかけるのも禁物です。OSSの使用条件は、商用ソフトのケースよりも緩やかな制約であるだけに、管理方法を定めるのが難しい面もありますが、そうはいってもOSSの制約に関して注意を払わないのも、あるいは利用する従業員の自由というのも少し危険です。そこで、企業の情報システム管理部門は、その企業内で利用されるOSSをリストアップし、それらのライセンス条件(GPL等)を調べ、企業内のエンドユーザに対して、商用ソフトの強い制約と対比させながら、周知が必要と考えられるOSSの制約について注意喚起するのが良いでしょう。ほとんどのOSSは、社内で使用することに制約はありませんが、どのような行為が社内での使用の条件を逸脱するかを理解することが重要です。主要なものだけでも50種類以上もあるOSSライセンス(参考:Open Source Initiative が認定したOSSライセンス)をチェックするのは大変ですが、法務部門などと上手に協力することが必要でしょう。

次に、2段活用、すなわちLinux/OSSのビジネス活用における制約ですが、この対応は企業としてガッチリと取り組まなければいけません。企業が製品としてOSS関連の派生物を他者に引き渡すときには、たとえ参考製品であろうと無償製品であろうと、そのOSSライセンスを遵守するための十分な注意が必要です。従業員個人や一部門が行ったとしても、企業としてそのライセンス条項に関わる義務が発生するため、企業としての取り組みが必要になるのです。ここで、派生物というのは、Linuxでいえば、改造したソースコード、ソースコードをコンパイルして作成したバイナリ、バイナリを組み込んだ製品、Linuxで動作するデバイスドライバー、さらには、Linuxの実行時ライブラリを組み込んだアプリケーションなども含み、それぞれにGPLやLGPL(Lesser GPL)といったライセンスの遵守が必要となります。アプリケーションプログラムに適用されるLGPLのような、緩やかなライセンスの方が、かえって注意が疎かになりがちで、きちんとした理解が必要になります。Linux/OSSのビジネス活用には、法務部門などの支援のもと、製品物流など、企業全体としてLinux/OSSライセンス遵守への取り組みが必要なのです。

さらに、3段活用、Linux/OSSのコミュニティへの開発貢献活動における制約としては、先ずはソフト開発技術者として、商用ソフトやOSSの著作権、商標権、特許権等に対する知識、および、それらを尊重するモラルを身に付けることがあげられます。貢献したソースコードに誤って商用ソフトの断片が混入するような事態は、開発者個人としても、また、所属する企業としてもあってはならないことです。企業活動として開発貢献に参加するには、当該OSSライセンスに関する完全な理解が必要ですが、特に、ソースコード開発を行う場合は、当該企業内の他のプロジェクト(独自開発ソフトやラインセンスを受けている商用ソフト)からの隔離など、2段活用とは少し異なった角度の体制作りも必要です。

このように、企業がLinux/OSSを活用する際には、OSSライセンスに対する理解とそれらが課す使用条件を遵守する意思や体制が必要になります。しかし、これらをうまく実現できれば、OSSを使うことは怖くありません。では、これはどのように行うと良いのでしょうか? 実は最近、The Linux Foundationがこれらを支援するドキュメントおよびツール類を、「フリー & オープンソースソフトウェア コンプライアンス」プログラムとして公開しました。次回はこのプログラムを含む対策支援方法について紹介したいと思います。

 

著者プロフィール

工内 隆(くない たかし)
工内 隆(くない たかし)

2001年以来、富士通にてLinuxの開発および適用を推進、また、LinuxディストリビュータやLinux開発貢献に力を入れる企業間の協業を企画。富士通退職後、2006年にThe Linux Foundationのジャパンディレクタとなり、世界のLinux開発コミュニティと日本のLinux開発者の間の『橋掛け』に傾注。2010年1月、ジャパンディレクタを退き、アドバイザとしてThe Linux Foundationの活動をバックアップしている。

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