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Home 特集 コラム 工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」 「よしっ、Linuxで行こう!」VOL8 気持ち良く制約と付き合う その2

工内 隆の「よしっ、Linuxで行こう!」

「よしっ、Linuxで行こう!」VOL8 気持ち良く制約と付き合う その2

 

前回書いたように、企業がLinux/OSSを活用する際には、OSSライセンスに対する理解とそれらが課す使用条件を遵守することが必要になります。それらを支援するプログラムとして、最近、The Linux Foundationは、ドキュメント、およびツール類、「フリー&オープンソースソフトウェア コンプライアンス」プログラムを公開しました。

公開されたドキュメントは、商用ソフトとOSSの両方を取り扱うビジネス環境の中で必要な対策を具体的に例示しており、既に企業内でコンプライアンスを実施している企業においても対策の十分性の確認に役立ちます。現在、これらのドキュメントの日本語訳が日本語サイトからダウンロードできるようになっています(下記)。

フリー オープン ソースソフトウェア コンプライアンス(基本概念)
フリー オープン ソース ソフトウェア コンプライアンス プログラムの確立: 課題と解決策
フリー オープン ソース ソフトウェア コンプライアンス: 誰が何をするか
オープン コンプライアンス プログラム : 自己診断チェックリスト

「フリー&オープンソースソフトウェア コンプライアンス」のドキュメントで注目すべき点を2つ紹介します。
1点目は、OSSを組み込んだ製品に部品表(Bill of Materials: BoM)をつけることを提唱している点です。海外のパートナーや部品の納入者と一緒に製品作りをするケースにおいても、最終製品に対してOSSコンプライアンスを抜け無く実施できる体制をとるために、製品・部品の受け取りの際に、それらに含まれるOSS製品を定型化したBoMでリスト化し、さらに、製品開発の要所でソーコードのスキャンツールを適用し、BoMとソースコードに含まれるOSSライセンス文書との間に相違のないことを確認することも勧めています。OSSがいろいろな製品の構成部品として活用されている状況に対応するためのものです。
2点目は、コンプライアンスに問題が生じOSSコミュニティから不備指摘を受けた時の心構えまで、懇切に説明されている点です。そのような問題が起きてたとしても、決して解決できない問題ではないことを示しており、OSSコミュニティとの良好な関係を持つThe Linux Foundationならではの内容となっています。

また、OSSライセンスの特性を考える資料としては、2005年頃、日本OSS推進フォーラムのビジネス推進WGでまとめた、「ビジネスユースにおけるオープンソースソフトウェアの法的リスクに関する調査」があります。この活動には筆者も参加しました。この調査は、当時のOSSへの未成熟な理解の状況の改善を目指した活動でした。その頃、まだ議論途上だったGPLv3についての言及が欠けていますが、GPL等OSSのライセンスを考える資料としては、現在でも有効だと考えます。

ところで、製品開発の担当部署や情報システム管理部門がLinux/OSSを活用しようとしても、企業の中でコンプライアンス体制を確立することが高いハードルになっているケースも多いのではないでしょうか。このハードルを越えるためには、筆者は次の3つのステップが重要だと考えます。

(1)法務部門との連携
OSSの技術評価の結果、ビジネスに活用しようと決めたならば、法務担当部署に協力を仰ぐ必要があります。しかし、企業リスクの回避を使命とする法務部門の方々は、往々にして、OSSライセンスの自由さにかえって警戒心を抱くことがあります。しかし、OSSライセンスに関する条文解釈や、それに対応した企業のアクションの十分性の検証は、法務担当者の専門的知識が不可欠です。そのため、OSSを活用しようとする部門は、法務部門に対して当該ソフトの技術的有用性、経済性を説明し、OSSライセンスが定める制約を一緒に検討してもらったうえで、それらに沿った社内コンプライアンス体制の確立に協力を求めるのが良いでしょう。Linux/OSSの活用に法務部門との連携は不可欠なのです。

(2)企業経営層の承認と全社的な認識
今日、どんな企業にとっても、ソフトは極めて重要な戦略上の課題の1つです。したがって、Linux/OSSをビジネスに利用するかどうかの決定は、お金がかからないとはいえ、企業トップが関与するに値する重要な事項と言えます。オープンイノベーションの流れに乗ることに積極的な企業トップもいれば、他の商用ソフトベンダーとのコンフリクトを心配するトップもいると思いますが、企業全体に渡るコンプライアンス体制を確立するためには、法務部門だけではなく、経営層の承認と支援も受け、全社的な戦略にして行くことが大切です。

(3)トレーニング体制の維持
OSSに対する理解とコンプライアンスを定着させるためには、企業のOSS利用レベルに応じて、また、従業員のOSSへの関わり方に応じて、エンドユーザに対しては、PCを使うのと同様のリテラシーとして、そして、製品を取り扱う部署に対しては、当該OSSのライセンス条項の厳格な遵守を可能とする管理手順として、トレーニングプログラムを作成することが必要です。また、そのようなプログラムは1回作れば済むとういう性格のものではなく、常に不備を是正し、効率を上げて行く体制が望まれます。

The Linux Foundationの「フリー&オープンソースソフトウェア コンプライアンス」プログラムには、Linux/OSSを活用する企業が実施すべきいろいろなトレーニングの案、すなわち、新入社員教育から、Linux/OSSを組み込んだ製品を取り扱う部署、コミュニティでの開発貢献を行う技術者に向けた専門教育まで、多層的なトレーニングが含まれています。加えて、The Linux Foundation自身が実施するトレーニングコースも(米国にて)開催されています。

1990年代までの、すなわち、オープンイノベーション以前の企業活動では、企業の製品開発過程は重要な企業秘密とみなされ、製品に深く関連したソフトの開発状況を企業間で情報交換するということは、標準化活動を除いて、あり得ませんでした。Linuxに課せられるソースコード開示の原則は、オープンイノベーションのメリットが機密保持のメリットを上回ったことの証明です。法務関連部門の方々は、企業間の連携に警戒的であったり、効率に疑問を呈することもあると思いますが、Linux/OSSに対する間合いをうまく縮めることは、ビジネスの効率を上げるためにも不可欠になっています。そこで、過剰な自主規制に陥ったり、あるいは、果たすべき義務を見過ごしたりしないようにするために、OSS技術者がコミュニティに参加するのと同様、法務部門の方々もLinux/OSSのコンプライアンスに関する企業間の情報交換を積極的に行うと良いのではないでしょうか。The Linux Foundationでは、完全に公開された「フリー&オープンソースソフトウェア コンプライアンス」プログラムの他に、The Linux Foundationメンバー企業向けのLegal SummitFOSSBazaarのような活動も実施されており、法務関連部門の方々の情報共有、効率的な管理手順の議論、さらには得られた結果を全てのLinux/OSS利用者と共有する場を提供しています。活用してみてはいかがでしょうか。

Linuxを始めとした多くのOSSに課せられたソースコード公開の原則は、Linux/OSSを活用する全てのプレイヤーがイノベーションを共有する仕組みの根幹をなしています。次回は、Linuxが今後どのように進化し、今後の製品開発にどのようなインパクトを与えるのかを考えてみたいと思います。

著者プロフィール

工内 隆(くない たかし)
工内 隆(くない たかし)

2001年以来、富士通にてLinuxの開発および適用を推進、また、LinuxディストリビュータやLinux開発貢献に力を入れる企業間の協業を企画。富士通退職後、2006年にThe Linux Foundationのジャパンディレクタとなり、世界のLinux開発コミュニティと日本のLinux開発者の間の『橋掛け』に傾注。2010年1月、ジャパンディレクタを退き、アドバイザとしてThe Linux Foundationの活動をバックアップしている。

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