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Home 特集 コラム シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」 【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(2) -オープンソース ソフトウェアに絡むパテントの問題

シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」

【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(2) -オープンソース ソフトウェアに絡むパテントの問題

オープンソース ソフトウェアに絡む法務上の懸念は、当初、もっぱら著作権に関するものでした。オープンソース ソフトウェアの利害関係者は、この技術の使用、学習、共有、あるいは改良を可能とするルールがどのように機能するのかを理解する努力をし、その細部をつかむのに時間を要しました。しかし、技術が実りあるものになるにつれて法務的な議論は拡がってゆき、今日のように移動体通信などの領域で世界中の技術競争が激化するようになると、パテントはオープンソースに絡む法務議論の最も重要な話題となりました。

パテントというのは、革新的技術の独占的実装を政府が公認するものであり、長年にわたり技術分野の重要な要素であると考えられてきました。過去においてパテントは、例えば英国産業革命で大きな役割を果たしました。また、近年においても、通信、コンピュータ、ネットワークなどの技術分野で投資保護を目的に利用されています。パテントにより技術革新が活性化され、また、ハードウェア領域の経済成長を促進することが理解されるようになると、パテントの有効性は強く支持されるようになりました。しかし、ソフトウェアの領域となると状況はそれほど確かではありません。 

パテントはアイデアの実装を保護することを趣旨としています。ところが、ソフトウェアは、本質的にアイデアの数学的表現を基礎としています。ハードウェア パテントとソフトウェア パテントの違いは微妙ですが、その違いの含意は多大です。すなわち、広範な適用性を持つソフトウェア パテントは、アイデアそのものの独占を公認するような効果を持つ可能性があるのです。これは、内燃機関の特定のタイプのエンジンの実装ではなく、内燃機関のアイデアそのものが誰かの所有に帰するのと同じようなものです。例えば、Free Software Foundation (FSF) のような組織は、この危険性を懸念して、ソフトウェアパテントの全廃を求めています。また、Peer to Patent のように、パテントの質の向上によって問題の軽減を目指している組織もあります。

ここでソフトウェア パテントが本質的に有害だと言っている訳ではありません。最初のソフトウェアパテントといわれるものは、1962年5月に英国で出願され、1966年8月に承認された「線形計画問題を自動的に解くコンピュータ」でしたが、それがコンピュータの成長やインターネットの開発に悪い影響を与えたようには見えません。しかし、ソフトウェアは、歴史的に製品ではなく創作活動であると理解される傾向があり、著作権 (コピーライト) で保護するのが通常の形でした。著作権に加えてパテントも利用することが業界規範となったのはごく最近のことであり、このような展開がオープンソースに対してほぼ間違いなく脅威をもたらしました。 

すべての人にソフトウェアの使用、学習、共有、改良を認めることは、パテントを使った支配とは両立し難く、ここ何年にもわたっていろいろな手段により両者の間の矛盾を軽減する試みがなされてきました。そのような試みの中で最初のものは、オープンソースライセンスの中にパテント関連の条項を記述することでした。ライセンス条項としては、オープンソースソフトウェアの配布を行う全ての人に自動的にそのコードが必要とするパテントの実施権を他のユーザに認めることを要求するものであり、いろいろなプロジェクトのコミュニティにおいて、その利害関係者同士の信頼と協調を形成する上で有効性があることが証明されています。しかし、これは第三者からの攻撃にどう対処するかという問題の解にはなっておらず、また、企業が侵害をめぐって相互に訴訟を起こすことを防ぐ上でも限定的な解にしかなっていませんでした。

このような脅威に対応する手立てが、現存するリスク管理事例の手法から出てくるようになりました。その 1 つは、大企業間でクロスライセンス契約を締結することです。その契約の中で、特定プラットフォームや特定技術に関して相互非係争条項を盛り込むものです。これは、商用ソフトウェアに関してクロスライセンス契約を締結するのと似ており、有利な点(対象領域を意図どおりに制御)と不利な点(限定的な保障)があります。他には、RPXやASTのようなパテント買取組織に加入する方法があります。そのような組織は、オープンマーケットの技術を獲得し、加入者にライセンス供与します。これにより、パテント非実施事業者 (NPE: Non-Practicing Entities) に関連したリスクは軽減されます。しかし、それでも競合企業によるパテントの戦略的利用に対しては限定的な効果しかありません。

やがて、オープンソースの協調精神を利用し、利害関係者によるリスクと第三者によるリスクを同時に軽減するアイデアが現れました。それは、ひとつのコミュニティを立ち上げ、その中では参加者は共有されたプラットフォームに関して非係争を誓約し、同時に中立的なパテントプールを作って第三者からの攻撃に対する防御とするというものです。そのような非係争コミュニティの最初の組織である Open Invention Network (OIN) が、Linux エコシステムの保護を目的として、Red Hat、IBM、NEC、Sony、Philips、および Novell により、2005 年に設立されました。OINは、400を越えるコミュニティ関係者の数千のソフトウェアパッケージをカバーしており、オープンソースにおける最大の非係争手段となっています。

今後もパテントとオープンソースは両方とも存在し続けるでしょう。これら 2 つの長く時として不安定な歴史を考慮すれば、またこれらが知的財産に対する正反対のアプローチの代表であることからも、これら 2 つの間には、すべての緊張を解決できる単一の方法など存在し得ないことが自明でしょう。しかしながら、オープンソースの利害関係者は、今日、パテントの絡んだビジネス リスクとリーガル リスクを軽減する一連の選択肢を持ち、The Linux Foundation のような中立的な組織をはじめ、いろいろな組織が多くの支援と情報を提供しています。

パテントの問題はまだまだ継続するでしょう。しかし、ビジネスもまた大部分がいつも通りに継続します。

著者プロフィール

Shane Coughlan(シェーン・コークラン)
シェーン・コークラン

Shane Coughlanは、コミュニケーションとビジネス開発の専門家です。彼は、技術分野に関連した商業組織と非商業組織の間の橋渡しにおいてよく知られています。彼の業績としては、欧州でフリーソフト関係の主要NGOの法務部門を立ち上げたこと、4つの大陸にまたがって270人以上の法務関係者と技術専門家のネットワークを構築したこと、また、フリー/オープンソースソフトウェアに特化した最初の法的レビューの仕組みを作り、企業とコミュニティの間の利害調整を行ったことなどがあります。Shaneは、インターネット技術、組織管理、コミュニティ形成、フリー/オープンソースソフトウェアに関連して深い知識を持っています。彼はこれまでに、サーバー、デスクトップ、エンベデッド、あるいは、モバイル通信に関連した企業と協業した経験を持っています。彼のプロフィルは次のサイトに掲載されています
http://jp.linkedin.com/in/shanecoughlan

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