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Home 特集 コラム シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」 【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(3) -いかにしてFOSSでトレードマークが容認可能な制約とみなされるようになったか

シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」

【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(3) -いかにしてFOSSでトレードマークが容認可能な制約とみなされるようになったか

 

前回までに、オープンソースの法務的な理解のために重要な2つの側面を論じました。すなわち、コピーライトとパテントです。しかしながら、オープンソースに関連した議論として、トレードマークもまた知的財産法務の領域で熟考の価値があります。そう遠くない過去において、トレードマークに関する議論は、パテントに関するものと同じくらいいろいろと論じられていました。特に、ブランディングを束縛する可能性への反動は、時には衝突に発展しました。

 

最も高い評価を得たオープンソースのトレードマークこそが、最初の衝突の発生源でしょう。Linuxに対するトレードマークの出願は、19948月に Linux開発に関係のない人物によって行われました。その後、この人物はトレードマークを使用する企業に製品価格の 25%に相当するロィヤリティを請求しました。この請求には書面で「LINUX®は専有物 (プロプライエタリ) である」と明記されています。これは Linusや彼の協力者にとって驚くべきことだったことでしょう。この Linuxの名称悪用は、トレードマークの出願以前にこの名称が広く利用されていたことを示すことにより解決され、その後、問題のトレードマークは 1997年に Linus Torvaldsに譲渡されました。ただしこの経験により、オープンソース コミュニティにはトレードマークへの不信感が植えつけられてしまいました。

 

この不信感が、時には衝突となって火を噴きました。2005年に開設されたウェブサイトがその一例で、JBOSS Inc.が所有するトレードマークの管理法に異議申し立てをするものでした。そこで行われた議論は、2007年の Bill Dudneyの訴訟にほぼ要約されています。 Bill Dudney の見解は、多くのサービス プロバイダーが JBossコードを普及させたのだから、これらのプロバイダーには JBossコードに付随するトレードマークを自由に使用する権限があってしかるべきだというものでした。法務的な経歴のある人ならわかることですが、この主張は、トレードマークの関連法規からみれば支持されるものではありません。トレードマークというのは、誰が製品やサービスを提供しているかを識別するのを助けるために用意された仕組みです。したがって、誰にでも当該トレードマークの使用を容認することはこの趣旨に反します。しかし、オープンソースのコードを利用したり、学習したり、共用したり、あるいは、改良したりする人々のコミュニティを育成しながら、同時にアイデンティティに関する制約を課することは、微妙なバランスを要する行為です。

 

そのバランスが、完璧でないこともあります。2006年、IT@Corkに対し、O'Reilly Mediaの許可なく Web2.0のトレードマークを使用することを差し止める命令書が届きました。IT@Corkが、カンファレンスに Web2.0の名称を使おうとしたのです。その後 Tim O'Reillyと彼の会社は、トレードマークの管理に手荒い手法を用いているとして公の批判に直面しましたが、実際のトレードマーク問題は、最終的に両者の間で友好的に解決されました。 すなわち、IT@Cork は、トレードマークをイベントに使用する許可を得ることができました。一方、O'Reilly Mediaは声明を発表し、問題をもっと効果的に処理することができたはずだと述べました。 

 

Matt Asay2008年のコメントで指摘されているように、オープンソースとトレードマークの緊張関係の主要な問題は、知識不足に起因していたようです。オープンソースに関わる人々、とりわけ開発者やスモール ビジネスに関わる人々は、ブランディングに関連した法制度がどのように役割を果たしているかについて、限られた知識しか持っていなかったのです。たとえば、彼らはシステムにサービスを提供することと、そのシステムに関係のあるトレードマークの誤った使い方との境界が容易にはわからなかったのかもしれません。 

 

幸いなことに、2008年以来、状況は変わってきました。一番重要な進展の 1 つは、トレードマークが許す制約にはどんなものがあるか、およびそれがオープンソース ライセンスにどんな影響を与えるかに関する認識が高まり、人々に理解されるようになったことです。その理由は、大型のプロジェクトがトレ-ドマークとその使用法を記述したドキュメント持つようになったことにあります。そのようなプロジェクトとして、ApacheMozillaDebianKDEOpenOffice.orgなどがあります。これらのトレードマーク使用法の説明は、コミュニティに対する教育の型を作る助けとなり、それが個々のユーザー コミュニティを超えた明確な理解の助けとなったのです。

 

このようにしてトレードマークに関する議論は、「トレードマークがコミュニティの外側の問題として捉えられる状況」から、「トレ-ドマーク ポリシーが、コピーライトやパテントに関するポリシーと同様、コミュニティの重要事項として捉えられる状況」へと次第に変わっていったのです。 ちょうど  IT (情報技術 における決定がソフトウェアのコードだけに基づいてなされるのではなく、プロバイダーやサポート パートナーの選択にある種の評判が重要であるように、これはオープンソース ソフトウェアにとって不可欠の進歩だったのです。別の言い方をすると、オープンソースは本質的に共有されたプラットフォーム上で共同開発する人々に関わるものですが、他方で、商業的な投資では、製品・サービスのブランドを各自のメリットに従って選択できる必要があります。Harvey Anderson (Mozilla の法務相談役)Tiki Dare (当時 Sun Microsystemsの法務部長)は、2009年に発表した論文で、「トレードマーク、すなわちブランドのアイデンティティの基礎をなす法的権限こそがオープンソースの世界で必然的により大きな役割を演じることになるだろう。」と指摘しています。 

 

これは、オープンソースや IT市場におけるトレードマークの課題が完全に解消したなどと主張しているわけではありません。トレードマークは、誰がサービスを提供するか、あるいは、誰が製品の元開発者だったのかを識別するわかりやすい方法を提供しますが、同時に、公的調達、ロックイン、および公正な競争の問題でも重要な影響力を持ちます。たとえば、2012年の OpenForum Europeで発行されたレポートでは、「2011101日から 1231日の間の EU内の入札のうち、16% がサプライヤーのトレードマークへの具体的な言及を行っており、調達ルールに違反している。」とのことです。EU GDP20% 近くの公的調達が、明らかに考慮に値する問題を含んでいるのです。これについては、またの機会に取り上げましょう。

 

(本文の中で使われるトレードマークへの毀損はありません)

 

関連情報:

トレードマークとは?:

http://en.wikipedia.org/wiki/Trademark

Linuxにおけるトレードマーク問題:

http://www.h-online.com/open/features/The-Happy-Dinosaur-747083.html

JBossトレードマークへの異議申し立て:

http://thejbossissue.blogspot.jp/ 

Bill Dudneyの見解:

http://bill.dudney.net/roller/bill/entry/1 

Tim O'ReillytoWeb 2.0

http://www.roughtype.com/archives/2006/05/opensource_trad.php

トレードマークとコミュニティに関する Matt Asayの見解:

http://news.cnet.com/8301-13505_3-9986674-16.html 

ビザなしのパスポート: オープンソース ソフトウェアのライセンスとトレードマーク:

http://www.ifosslr.org/ifosslr/article/view/11/37 

欧州における調達とトレードマーク:

http://opensource.com/government/12/2/openforum-europe-finds-trademark-references-widespread 

著者プロフィール

Shane Coughlan(シェーン・コークラン)
シェーン・コークラン

Shane Coughlanは、コミュニケーションとビジネス開発の専門家です。彼は、技術分野に関連した商業組織と非商業組織の間の橋渡しにおいてよく知られています。彼の業績としては、欧州でフリーソフト関係の主要NGOの法務部門を立ち上げたこと、4つの大陸にまたがって270人以上の法務関係者と技術専門家のネットワークを構築したこと、また、フリー/オープンソースソフトウェアに特化した最初の法的レビューの仕組みを作り、企業とコミュニティの間の利害調整を行ったことなどがあります。Shaneは、インターネット技術、組織管理、コミュニティ形成、フリー/オープンソースソフトウェアに関連して深い知識を持っています。彼はこれまでに、サーバー、デスクトップ、エンベデッド、あるいは、モバイル通信に関連した企業と協業した経験を持っています。彼のプロフィルは次のサイトに掲載されています
http://jp.linkedin.com/in/shanecoughlan

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