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Home 特集 コラム シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」 【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(4) -オープンソース サプライチェーン管理における法務と交渉のバランス

シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」

【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(4) -オープンソース サプライチェーン管理における法務と交渉のバランス

これまでにオープンソース ガバナンス (企業統治) 3つの基本、すなわちコピーライト、パテント、およびトレードマークについて説明してきましたが、今回はさらに重要な企業の課題について見てみましょう。つまるところ、法務活動はオープンソース ビジネスの一側面でしかなく、ライセンスや契約の文面外の圧力を被るものです。おそらく、そのような大きな圧力の 1 つは根幹の 1 つとも言えるもの、すなわち、近来のサプライチェーンが長大でかつ複雑であるという状況です。

サプライチェーンを純粋に法務的観点から考えてみると、またとりあえず、たとえばGPLの適用されるコードに限定して見てみると、コンプライアンスのための要件は比較的分かりやすいと言えます。リンクの仕方を間違えないようにし、ライセンス文とソースコードの提供申し出を最終製品に含めることなどを確実に実施すれば良いのです。これらの基本ステップは、人々が最初に現場で実際に対応する際のあらゆるオープンソース コンプライアンスをおおむね要約していました。しかし、家電製品のようなものを考えると、物事はそんなに簡単ではありません。

家電製品では、数十ないしは数百のサプライヤーから供給されるハードウェアおよびソフトウェアの部品を必要とするでしょう。また、複数のオープンソース  ライセンス / 商用ライセンスのソフトウェア コードを使っているでしょう。さらに、利用するサプライチェーンの内外でハードウェア、ソフトウェア、デザインなどのパテントを受けているかもしれません。どこかでプロセスをちょっとブレークダウンしただけでも、深刻な法務的問題を起こす可能性があります。あるエンジニアがソフトウェア コードをコピーしたが、それをちゃんと記録するのを忘れたとか、使用する一連のツールに誤ったものを入力してしまったというような単純な問題かもしれません。人々が善意に基づいて行動していても、それでもサプライチェーンの下流に賠償責任を生じるような事態はあり得ることであり、サプライヤーと取り引きする企業は、この問題に備えて常に証明の準備を忘れてはならないのです。

このような状況は、オープンソースを利用する企業がどのようにサプライチェーンにアプローチするべきかを示唆しています。企業は、製品そのもののコストや、製品の技術に関連したライセンスの要件だけを考慮したのでは不十分であり、何かがうまく行かなかったときのリスク分担も十分に考慮に入れなければなりません。

以前、私はとある有名多国籍企業の企業弁護士の意見を聴いたことがありますが、彼はこれを「本質的に信頼によって律される問題」と表現することで分かりやすく説明してくれました。一定の市場価値があり、長期にわたる関係を築いてきたサプタイヤーに対する契約においては、彼らの企業は非常に大きな柔軟性を許容していました。一方、比較的零細なサプライヤーや新規のサプライヤーに対する契約においては、サプライチェーンの上流における故意のまたは偶発的な過誤のリスクに十分なコスト配分をするような強い文言を挿入していました。サプライチェーンを使用する企業の規模に依存した面がありますが、素晴らしいソリューションのように思えました。ただしこれはサプライヤーにそのような要求ができるほどの大きさの企業であることが前提であり、そのような企業だけがこのような交渉ポジションを享受できるのです。

別の多国籍企業の代表者の方に率直な意見を伺うと、彼らの見方が部分的に地理条件に依存していることが判りました。サプライヤーが国内に所在している場合や、同等の法律システムの国に所在している場合は、問題発生時の責任が上流サプライヤーに適用されるということについて、 契約と国内法の効力により大きな信頼感がありました。しかし他の国、特にアジア諸国に所在している場合、その国の法律システムに対する信頼が薄く、それゆえ、その状況に釣り合うよう、オープンソース コンプライアンスの順守を含んだより厳格な契約や、可能であれば、契約の履行を促すような段階的購買 (一括購買契約と納入・コンプライアンス順守の実績に応じた支払い) を行っていました。これは一種のニンジンとムチです。コンプライアンスを順守することに利益があり、怠ると制裁の怖れがあるのです。

さらに別の企業の代表者の方は、問題の核心に触れるような見方、すなわち、企業がサプライヤーと取引する際の各種アプローチの選択方法とその理由を説明し、アプローチ方法を定式化するのに有効な経験則を提供してくれました。彼によれば、それはまさにデューデリジェンス (詳細な調査 = 精査) を実行すること、および、その企業がコンプライアンスの要件を満たすために「最善の努力」を払ったことを示せる一連の行動を選択することでした。この「最善の努力」が、実際に「考えうる全てのことを実行すること」を意味しているとは思えませんが、それでも、何か問題が発生し、企業が法廷で違反が故意でなかったと主張し、さらに究極的にはサプライヤーと共に賠償責任にあたるときのリトマス試験にはなります。

サプライチェーンの管理方法を作成するためにこのようなことを土台とするのは、いささかひねくれた見方に聞こえるくかもしれません。しかし客観的に見て、これはは包み隠さず正直に述べているだけなのです。企業は法的要件の順守のために「最善の努力」を払う必要があります。そうすることによって、企業は直接および間接のリスクを低減するのです。そのような努力の限界は、当該企業、法的システム、市場の状況に依存し、それゆえ一般化はできません。これらの変数を考慮し、そこからポリシーやプロセスを構築するのは、企業のマネージメントや法務部門の仕事です。当然ながら、どんな企業でもリソースの無駄を避け最小の努力で対応することをめざします。しかし、基本的要件のために超えるべき最低のハードルでさえも結構高いのです。

これらの全ては次のような単純な事実の文脈で理解されるべきです。どのような企業も、常に全ての市場要件のコンプライアンス順守に成功するとは限らない。企業は「最善の努力」を払い、問題が発生したときにはこれを前提に善意の行為の結果であることを証明し、そして誤りを正すための行動をとらなければなりません。要は、市場での長期的な成長を確かなものとしながらも、当面の責任を限定するためのできる限りのことを実施し、そして収益への過度の影響が出ないうちに、問題を解消した製品を市場に戻すということです。 

サプライチェーン管理には、法務とビジネスセンスのバランスが最終的に必要です。このバランスは、法務的な問題の発生前にも、発生中にも、発生後にも適用される必要があります。その問題が企業内で発生しようがサプライヤーで発生しようが違いはありません。正しく行われれば、長期、短期のコストを最少にすることができます。誤って行われれば、短期的な利得は長期的な問題となって現れるか、あるいは、その逆となります。実はガバナンスというのは法務を超えたものであり、サプライヤー、カスタマー、さらにはより広いエコシステムの領域に入っていってしまうものです。個々の法務やビジネスの圧力に焦点を絞りすぎて、心の中に大きな図柄を持たないと、明白であるにもかかわらず、見逃してしまうポイントなのです。

著者プロフィール

Shane Coughlan(シェーン・コークラン)
シェーン・コークラン

Shane Coughlanは、コミュニケーションとビジネス開発の専門家です。彼は、技術分野に関連した商業組織と非商業組織の間の橋渡しにおいてよく知られています。彼の業績としては、欧州でフリーソフト関係の主要NGOの法務部門を立ち上げたこと、4つの大陸にまたがって270人以上の法務関係者と技術専門家のネットワークを構築したこと、また、フリー/オープンソースソフトウェアに特化した最初の法的レビューの仕組みを作り、企業とコミュニティの間の利害調整を行ったことなどがあります。Shaneは、インターネット技術、組織管理、コミュニティ形成、フリー/オープンソースソフトウェアに関連して深い知識を持っています。彼はこれまでに、サーバー、デスクトップ、エンベデッド、あるいは、モバイル通信に関連した企業と協業した経験を持っています。彼のプロフィルは次のサイトに掲載されています
http://jp.linkedin.com/in/shanecoughlan

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