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Home 特集 コラム シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」 【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(5) - コピーライトの移譲、および、コピーライト移譲に関する標準化の試み

シェーン・コークランの「法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ」

【法務、ビジネス、そしてコミュニティの交差するところ】(5) - コピーライトの移譲、および、コピーライト移譲に関する標準化の試み

 

コピーライトの移譲というのは、著作物の「所有権」を原作者以外のだれかに譲り渡すことを言います。個人から個人への直接の移譲もあれば、複数の所有者が単一の所有者(またはプロジェクト)に移譲を行い、コピーライトを合併・統合することも含まれます。後者のタイプの移譲はオープンソースでよく見られるものです。企業やプロジェクトが貢献者にコピーライトの移譲を要請し、責任を一点に集めることによりライセンスの変更やコピーライトに関連した決定をやり易くしているのです。

コピーライトの移譲にはいくつかの良い面があります。最も重要なものは、プロジェクトのコピーライトを統合することによってライセンスなどの管理業務がやりやすくなることです。たとえば、Mozilla2000年代前半にコピーライトが統合されていない状況でライセンス条件を変更しようとした際、広範なコピーライト所有者に接触し、許諾を得ることの難しさのために、完了までに4年半を要しました[1]。 もしも事前にコピーライトが統合されていたなら、必要な時間と負担は大幅に少なくなっていたことでしょう。

コピーライトの移譲はプロジェクトの管理業務を簡略化する反面、論争の原因になることもあります。権利の移譲は、原作者の権利の喪失を意味するのです。その結果として、移譲を受けた所有者のその後の決定に関して、批判や矛盾が起こり得るのです。これはまたオープンソース経済の価値の急所である「クラウドソーシング(大衆によるソフト開発)」の維持に問題をもたらします。もしも誰かがそれを台無しにすれば、彼らのエコシステムの価値が全て台無しになるのです。

結局、コピーライトの移譲には賛成すべき面と反対すべき面の両論があるようです。メリットは管理面で簡潔であること、また、維持が容易になることであり、課題は信頼性と公平性の問題です。負の側面の問題を解消しつつ正の側面の利益を享受する試みは、オープンソースにおける権利移譲の契約文書を定型化する協調活動、「ハーモニープロジェクト」で行われてきました[2]。 そこでは、個人とプロジェクトの間の移譲のプロセスを円滑にするため、将来的に「信頼できる仲介者」を設けるという案さえも議論されました。

Linuxはこのような試みがなぜ有用であるかを示す好例です。というのは、Linuxは、GPLv2ライセインスのもとで配布されていますが、ライセンスの更新に関する自動規定がないからです。Linuxにおいても必要性に迫られてプロジェクトのライセンスを更新しようとするとMozillaと同様の困難に直面し、各貢献者に個人的に接触し、許諾を得る必要があるでしょう。このプロセスは、Mozillaのライセンス更新の困難が大したものでないように見えるくらい、10,000人を越える人々を捲き込んだものとなるでしょう。もちろん、Linuxプロジェクトはライセンスを変更しようなどとは考えていないでしょう。しかし、それは管理面で不可能だから変更しないのではなく、十分に検討したうえでの決定であるべきなのです。

それでも・・・

コピーライトの移譲に対する批判はいろいろな分野のコミュニティの有力者から続いています。とりわけ、ハーモニープロジェクトの周辺から的を射たものが上がってきています。たとえば、有力な論者であるDave Neary (筆者のアイルランド人仲間は、次のような質問で問題を指摘しています。「あなたの目的の達成にCLA (Contributor License Agreement:貢献者ライセンス契約が本当に必要ですか?CLAは実際のところあなたがやろうとしていることに対して有害ということはないでしょうか?結局、私のポジションは変わりません。目指すところは、よりよいCLAを作ることではなく、そんなものを避けることができるかどうか、そして、どうすれば活発な開発コミュニティの中で開発し、成功を遂げることができるかを考え出すところにあるべきでしょう。」[3]

Red Hatの企業弁護士 Richard Fontanaは、ハーモニーについてもっと明確に、「私は、ハーモニーは不必要であり、混乱を引き起こすもの、かつ、オープンソースソフトやフリーソフトの開発にとって危険になる可能性のあるものだと信じています」と述べています [4]。さらに彼は次のように批判を続けています。「定型化された貢献者契約は、マキシマリストのものであろうと、あるいはミニマリストのものであろうと、オープンソースにおいて普通でない現象です。私たちは、オープンソース コミュニティ開発で何がうまく働き、何が失敗し、何が害を起こすのかを学習し始めたばかりです。私たちは、オープンソース貢献ポリシーの法則を統合したり、異なる意見を調和させたりするには未だ未熟なのです。私たちは、ハーモニーの成果を用いることができないのはもちろんのこと、(コピーライトの移譲に関して)常に異論の多いマキシマリスト アプローチの勝利を宣言するには全く準備不足です。」 [5] [訳注:マキシマリストのアプローチは、CLAにおいて多くの権利関係を記述、ミニマリストはその逆]

長年にわたるオープンソース コメンテーターで、最近OSI (Open Source Initiative) の会長に選任されたSimon Phippsは、次のように懸念をまとめています。「オープンソースにおいて、関係者は制度的不平等と集権的規制を避けるべきです。コピーライトの集約によってプロジェクトを規制する試みは、不信、争い、規則ばかりの活動に至ります。私がいつも言ってきたことを繰り返しますが、『規制』ではなく、『影響力行使』を用いるべきです。なぜなら、全てが絡みあう今日の社会では、『影響力行使』こそが成功をもたらす反面、『規制』はやがて無効になるからです。[6]」

結論として、コピーライトの移譲は法務的な管理にメリットもありますが、同時に効果的な協調に問題も引き起こしかねない概念なのです。移譲の結果、統合されたコピーライトの権限を保持する側に有利に働く方向で、プロジェクトの力のバランスに変化が発生することは否定できません。これは必ずしも悪いことではありません。しかし、良いといえる状況もそんなに頻繁にあるわけではありません。ハーモニーはオープンソースのコピーライト移譲に関する標準化に最も近づいていますが、それでも移譲の価値が決定的に証明できるようになるまでの道程は長いでしょう。結局、オープンソースの技術革新は、「クラウドソーシング」をもって遂行されているのです。クラウド(大衆)と仲違いしてしまっては、もはや技術革新はありません。 

--脚注--

[1] http://blog.gerv.net/2006/03/relicensing_complete/

[2] http://harmonyagreements.org/index.html 

[3] http://blogs.gnome.org/bolsh/2011/07/06/harmony-agreements-reach-1-0/ 

[4] http://opensource.com/law/11/7/trouble-harmony-part-1 

[5] http://opensource.com/law/11/7/trouble-harmony-part-2 

[6] http://blogs.computerworlduk.com/simon-says/2011/07/harmony-out-of-tune/index.htm

著者プロフィール

Shane Coughlan(シェーン・コークラン)
シェーン・コークラン

Shane Coughlanは、コミュニケーションとビジネス開発の専門家です。彼は、技術分野に関連した商業組織と非商業組織の間の橋渡しにおいてよく知られています。彼の業績としては、欧州でフリーソフト関係の主要NGOの法務部門を立ち上げたこと、4つの大陸にまたがって270人以上の法務関係者と技術専門家のネットワークを構築したこと、また、フリー/オープンソースソフトウェアに特化した最初の法的レビューの仕組みを作り、企業とコミュニティの間の利害調整を行ったことなどがあります。Shaneは、インターネット技術、組織管理、コミュニティ形成、フリー/オープンソースソフトウェアに関連して深い知識を持っています。彼はこれまでに、サーバー、デスクトップ、エンベデッド、あるいは、モバイル通信に関連した企業と協業した経験を持っています。彼のプロフィルは次のサイトに掲載されています
http://jp.linkedin.com/in/shanecoughlan

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