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カーネルハッカーズ座談会 - Kernel3.0 & Linux20周年特集 -

1991年8月25日に産声を上げたLinuxは、 昨年で 20周年を迎えました。そして、カーネルのメジャーバージョンも3.0に更新。この2つの大きな節目を迎えたLinuxについて、日本を代表するコミュニティ開発者、Kernel Hackerの皆さんの集まって頂き、お話を伺いました。
終始笑いにつつまれた座談会の様子を、4回シリーズでお届けしています。

(編集部注:このインタビューは昨年(2011年)の夏に開催されたものです。時勢等はその当時のものであることをご了承下さい)


連載第1回】  連載第2回】  連載第3回】  連載第4回


杉田:  ちょっと時代は戻りますが、皆さんがLinuxに関わったきっかけを教えてもらえますか?


平松:  Linuxに関わったのは、大学時代の研究の中でLinuxベースのリアルタイムOSの改造をしたのがきっかけです。でもLinuxそのものよりは、むしろ、GPLの文言にほれ込みました。


山幡:  僕も、最初にあの文言を見たときは良いと思った。一度はほれ込む時期があるよね。


平松:  プログラマーをやっていたらわかるじゃないですか。商用のOSにしてもLinuxにしても、内容的にはほとんど変わらないし、使われる可能性も同じ。GPLのコードだと、自分たちも見て理解できるし、それが作れるとなれば、どんどん進化するだろうと思った。だからGPLで開発されているLinuxは普及するに違いないと思って、Linux関係の募集をしていた企業を探して就職しました。


西島:  僕は、大学時代は使う側で、開発や改造はしていなかったのですが、PCやサーバーの管理をしていたら、どんどんOSに興味が湧いてきて。ある日、生協でLinuxの本を見つけて手にとったら、それが「詳解Linuxカーネル」でした。杉田さんとか平松さんの名前が載っていて、すごい人たちがいるなあって。最初のきっかけでしたね。で、就職を日立に決めて、現在に至っています。


野村:  私は、大学のときはLinuxとは縁が無く、全然違うことを勉強していました。自然言語理解の研究をしていて、Prologなんかでプログラムを組んでいました。ただ、そろそろ大学を出るかという頃に、UNIX環境が自分でも欲しいなあと思ったんですね。たまたま近くにいた人がLinuxを教えてくれて、使ってみたのがきっかけです。ちょうど会社に入った時期とLinuxがブームになり始める時期が重なって、会社でもLinuxをやることになって、「野村くん、Linuxわかるよね?」、と言われて。それで担当になりました。


岩松:  僕は最初、Windowsのプログラマーだったんです。大学でUNIXを触りながら、Windowsのデバイス・ドライバなどを開発していました。卒業後、某画像処理メーカーに就職したんですが、その時に「君、UNIXをやっていたんだから、Linuxもわかるでしょ。ドライバが書けるならば、当然Linuxも書けるよね」と言われて、Linuxの開発をやることになりました。でも、ドライバを書いたんですけど、upstreamにマージすることはできないって言われて。「我々の会社の財産を公開するとはどういうことだ?」と言われました。楽しい開発の世界があるのに、コントリビュートできないのは嫌なので、その会社を辞めたんです。その後、Linuxユーザーズグループの活動にチョコチョコ参加していたら、日立のSHのLinuxを立ち上げた人と知り合ったんです。その当時、日立のデバイスでLinuxを動かして遊んでいた縁もあって、その人の会社に就職しました。今は出向でルネサスソリューションズにいます。

山幡:  私は、専攻はITとは関係ない分野でしたが、学生の頃から趣味でLinuxのドライバを書いたりして遊んでいました。その時のドライバのコードは、upstreamのツリーに入ったんです。今もコードが残っているかも。誰も使ってないかもしれないけど。

杉田:  学生時代にコミュニティに投稿したってこと?


山幡:  はい。それで人生が変わって、専攻とは関係なく、Linuxとかカーネルの開発を行っている会社に入りました。でも、岩松さんと同じで、パッチ投稿ができなかったので、やれる環境を求めて今の会社に転職しました。今やっていることは、Linuxをやり始めた頃とあまり変わってないかなあという感じです。


亀澤:  僕は、学生時代にちょうどカーネル2.2か2.4のコードを見たんです。なるほど、カーネルってこんな感じか、と思って自分でカーネル開発していたのですが、その間にLinuxが超スピードで進化していったので、自分の書いたカーネルはすぐに時代遅れになってしまいました。大学で少し長く研究を続けていたのですが、やはり就職しようと思い、リクルートさんに「僕、OSが書けるんです」と履歴書を持って行ったら、何社か紹介されて。結局、縁があって富士通に入りました。最初からLinuxの部署に入って、パッチもupstreamに出してOKだったので、皆さんのような葛藤はなかったですね。


杉田:  体制が整った段階で入ったのですね。幸運でしたね。


フェルナンド:  僕は15年前からLinuxに関わっています。僕は元々数学と通信を専攻していたのですが、ハードウェアにも興味あったので、修士課程では半導体を、博士課程では電気工学を取りました。日本に来る前に、スペインの電気工学の研究機関にいて、組込みシステムを作る部署で事故予知などを研究していたのですが、いつ の間にかリアルタイム版の Linux を使った分散センサーシステムを開発することになり、ようやく仕事としてLinuxに関わる機会を得ました。当時、カーネル2.1か2.2だったと思いますが、使おうとしたけどバグもあるし機能も不足していて使えなかった。そのため、改善パッチを書いたのですが、NDAを結んだ研究の中で開発したのでupstreamに出せないとのこと。更に、その機関はEUの資金で運営されていたのですが、政権交代があって予算が削られて、やりたいことができなくなったんです。それで気分転換のために、日本に1年だけ行こうと思い立って来日して、そのままNTTデータ先端技術に就職して、Linuxのセキュリティモジュールと障害解析ツールの開発の仕事をやっていました。当時は、会社も私もオープンソースの作法が良くわかっていず、あまりコミュニティ活動ができませんでした。でも、OSSセンターができて、コミュニティ活動に対する会社の理解も得て、今では自由に幅広く活動できています。

杉田:  皆さん、程度の差はあっても、会社の規則と戦ってコミュニティ活動を勝ち取ってきたんですね。逆に、この世界に入って楽しかったことってありますか?


亀澤:  それは、パッチを書いて、「Thank you」といわれることですよ! 自分で仕込んだバグを、自分で直しただけの時もあるけど。


(一同うなづきながら爆笑)


杉田:  コミュニティの活動って、やはり楽しいですか?


岩松:  英語の勉強になっています。


平松:  開発がスピーディーでいいですよね。コミュニケーションが早いから。


フェルナンド:  最先端に触れることができるってことじゃない? それに、Linuxがなければ同じ会社の人たちとしか開発できないけど、Linuxはコミュニティでいろいろな人たちと開発ができる。興味があれば、色々な情報も手にはいるし。それも楽しみのひとつかな。


西島:  とても楽しいです。様々な人がいて色々な考え方があり、大変勉強になります。また、問題を一緒に考えてくれるのがうれしいですね。


山幡:  コミュニティとの交流が一番ですね。パッチを書いたら、見てもらえる/使ってもらえるのは嬉しいです。


野村:  全く違うバックグラウンドの人と絡むことがあるのは面白いですね。私は、カーネルのことはあまり知らずにLinuxに首を突っ込み始めましたが、コミュニティの開発者とのやりとりの中で勉強していった部分も大きいです。


杉田:  そのコミュニティ開発ですが、自分たちが参加し始めた頃に比べて、何か変わってきたと感じることってあります? 良いほうでも、悪いほうでも。


山幡:  人が変わらないなぁって思う。


一同:  確かに。


杉田:  メンテナやコア開発者の顔ぶれって、ほとんど変りませんものね。でも逆に、暗黙のルールが守られて、本論に焦点を当てた議論ができる環境が維持できているのかも。でも、一番変ったのは、皆さんがコミュニティでも名の通ったコア開発者になり、メンテナも出たってことでしょうか。それで何か変わりましたか?


平松:  メンテナになって思ったけど、自分に直接メールが送られてくるようになりました。


フェルナンド:  確かに。メールにおぼれているメンテナもいるように思います。


平松:  早く対応したいのに、レスポンスが悪くて・・・。


杉田:  それは来るパッチ量が増えるだけでなく、皆さんの会社での仕事量が増えたことも影響しているのでは?


フェルナンド:  そう、両方ですね。あとメンテナが歳を取ってきたので、昔ほどがんがん働けなくなってきているかも。


(一同笑い)


杉田:  そうなると、すでに細かく機能が分割されてそれぞれにメンテナがいると思うけど、もっと細かくした方がいいのか、各機能のメンテナの体制を見直した方がいいのか、どう思いますか?


平松:  僕は、各機能にもサブメンテナ制度を取り入れるというか、二人ぐらいのメンテナがいた方が良いのではと思いますね。


フェルナンド:  私もその意見に賛成ですね。二人はいた方がいい。


亀澤:  理屈はそうなんだけど、二人にすると、片方が相手に頼って働かなくなるケースも出てくるのでは?


一同:  そうかぁ。。。


平松:  メイン、サブ。メイン、サブって、お互いにクロスで面倒を見るような形にしてくれれば大丈夫だと思うけど。


亀澤:  活動できなくなっても交代するのは大変だよね。


杉田:  そういえば、メンテナの世代交代って、あまり見かけない気がしますが、どうなんでしょう?


亀澤:  メンテナの世代交代っているの? なんでいると思います?


杉田:  メンテナが忙しくなって、所属会社の中で、開発だけではない仕事も担当するようになると、メンテナンス作業の大変になってくると思うんです。ある程度のところで交代というのもありかなと思うのですが。自己申告が一番ですけど。それに交代がないと、後輩が育たないですよね。


岩松:  確かに、今は全体的に年齢が上がっている気がしますね。


山幡:  それは、成功したコミュニティは何でもそうなんじゃないですかね。Linux以外でも。


平松:  新しくパッチを投げてくる人にはエンカレッジ(encourage)してって、Ingo Molnarが、僕らには良く言っていますよ。公には言いませんけど。人を育てて欲しいってことでしょうね。


杉田:  全部をボンと渡すよりは、少しずつ、責任を分担させるやり方がいいのかな。コミュニティの中で人が育っていくような体制ができると、もっともっと新しい人が入ってくるのでは、と思うので・・・。


山幡:  メンテナとして担当している機能を手放したくなるときってあります?


亀澤:  手放したくなるとき? いろいろな仕事で本当に忙しいとき!


(一同笑い)


亀澤:  例えば、同じ人から大量のパッチが一度に送られてきたときは大変。また、今日来たパッチをレビューするでしょ。何とか時間を作ってレビューし終わったら、翌日また次のパッチが送られてくる、なんてこともある。毎日対応できないし、他の人からのパッチを見る時間も必要だから、最低3日はあけて送って、と言っています。


平松:  そうなんですよ。レビューにも結構時間がかかりますからね。


亀澤:  自分も若かりし頃は、毎日バージョンアップして送っていたから、人のこと言えないんだけどね。でも、バランスなんですよ。1週間あけないと、レビュアーがつかないことが多い。レビュアーをつけようと思ったら、せく気持ちも抑えて、1週間寝かせる。linux.comの「仕掛け人に聞く」でも話したけれど、言われたところを直すだけではなくて、言われてないところも見直して、改善して出す。自主的に見直して欲しい。

平松:  1週間に1日だけでも良いから、メンテナの日とかいうのが欲しい。じっくり本腰を入れてコードを見たい時があるので。


杉田:  企業に勤めているとそういう悩みがありますよね。フルにコミュニティ活動をやって給料がもらえれば一番いいけど、日本の企業の現状ではそうはいかないでしょう。悩みどころですね。 ところで、コミュニティ開発って、今後、変わっていくと思いますか? 


フェルナンド:  すでに始まっていますが、機能分野ごとにサミットが開かれるようになってきましたね。2~3年前のことですけど、カーネルサミットで、今の形は報告しているだけで時間が終わってしまうのであまり意味がない、もう少し細かく分けてじっくりやろうっていう話が出ました。


平松:  そうですね。すでにKVMサミットがあるし、ファイルシステムもサミットがある。


杉田:  何かのカンファレンスに付随して、そういう小さい機能単位でサミットが開催されて、技術や方向性が具体的に議論されるようになってきたということですね。


平松:  そうです。それだけじゃなくて、Plumbersでは、サミットに入らなかったネタを話す場もあって面白い。例えば、本格的なサミットでは、既にサブシステムとして固まった機能について開発者が集まって議論するけど、Plumbersではプレビューやアイデアの段階にある機能について議論する光景をよく見かけます。ミニサミットの開催の必要性が増し、それに応える形でPlumbersやCollaboration Summitで場所を提供してくれるので、だんだん開催するグループが増えているって感じですね。

フェルナンド:  そうやって分けて議論しないと、把握しきれなくなっている。一人で全体を把握することは、もう難しい!


杉田:  全体を把握できている人って、いるんでしょうか?


亀澤:  いないでしょうね。なので、把握できていないところでバグが出る。ということで、やはり人を増やして欲しいです。


(一同笑い)


 



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