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Linux.com Japan

Home 特集 仕掛け人に聞く 「LinuxCon Japan 2010 仮想化ミニサミット」仕掛け人 Fernando Luis Vazquez Cao氏

仕掛け人に聞く フェルナンド氏

第二回目は、2010年9月27日~29日に六本木ヒルズで開催されたLinuxCon Japan 2010 において、仮想化ミニサミットを仕掛けた、日本電信電話株式会社のフェルナンドさんにお話を伺いました。(インタビュア:杉田 由美子 The Linux Foundation)

 


杉田:  最初に自己紹介をお願いします。


フェルナンド:  NTTデータ先端技術株式会社のフェルナンドといいます。現在、NTTオープンソースソフトウェアセンタへ出向して働いています。オペレーティングシステムチームと仮想化チームのテクニカルスーパーバイザ(Principal Software Engineer)をしています。1~2年前まで、kdumpに貢献したり、KVMを高速化するパッチを作るなど、コミュニティ開発も行う開発者の立場でしたが、現在はチームの技術全般についてマネジメントにも参加し、同僚をバックエンドから支援することも行っています。


杉田:  今回のテーマはクラウドでしたが、クラウドを選んだ理由は何でしょうか。


フェルナンド:  クラウドというのは、流行り言葉ではありますが、私自身は「いつでもどこでも柔軟にコンピューティング資源を活用できる」というクラウドのビジョンが魅力的だと思っています。実は、そのビジョンを実現するためにデータセンタに要求される技術(コンピューティング資源・ネットワーク・ストレージの仮想化、プロビジョニング等)は、成熟度の差があれ、そのほとんどがすでに揃っています。しかし、インターネット並みの普及を目指すならば、オープンかつ信頼性の高い基盤が必須になります。その基盤を純粋なオープンソーススタックで実現できるようにしたいと思ったんです。

オープンなソリューションを使わないと、柔軟なはずのクラウドがいろいろな障壁にぶつかることになります。例えば、仮想化が普及し、そのおかげでマイグレーションできるようになって、リソースのアロケーションが柔軟に調整できるようになりました。でも、WANを通じてデータセンタを跨いだマイグレーションをやろうとしても、まだ標準化された技術がなく、今のデータセンタでは簡単に出来ないんですよ。先程、必要な技術が揃っていると言いましたけど、それらをちゃんと統合し、IT業界としてみんなが使えるオープンな環境として整えていくのが大きな課題なんです。その課題を解決したいと思って、今回のミニサミットを開催しました。


杉田:  細かい質問で恐縮ですが、そのデータセンタ間のマイグレーションというのは、ディザスタリカバリのような用途に使うのですか? 


フェルナンド:  それもひとつの使い方です、でも、他にももっと身近な使い方があると思っています。例えば、あなたもアメリカに出張したことがあると思います。その出張先から日本で動いているマシンにアクセスすると、今の環境ではかなりのレイテンシーが発生して応答が遅いので、イライラしたことがあるのではないでしょうか? でも、仮想マシンをアメリカに持っていればアクセスは速くなり、日本で使っている場合と変わらなくなります。仕事の効率も良いし、ストレスもなくなる。そのような用途もあると思います。でも、そのためには、どのデータセンタでもキャリアーを問わず実現できるような技術、標準化が必要なのですが、まだ現場では実現できていません。

実は、このような問題意識を持っているのは私たちだけではありません。アメリカでは、スタンフォード大学やMITなどの大学の人たちが同じ問題意識をもっており、彼らはOpenFlowという技術を開発して、問題を解決しようとしています。もちろん、企業でもこの問題に取り組み、いろいろな対応技術を独自開発していますが、あくまでプロプライエタリーなもので標準化されてはいません。この大学の人たちはオープンソースで開発してネットワーク分野での研究を活性化・標準化しようとしています。このようなオープンな取り組みこそ、「いつでもどこでも柔軟にコンピューティング資源を活用できる」というクラウドのビジョンの成功に不可欠な要素だと思います。


杉田:  そのビジョンの実現に必要なオープンな技術を、今回は議論したかったということですか?


仕掛け人に聞く フェルナンド氏 フェルナンド:   そうです。ビジョンに必要な環境を実現するためには、データセンタだけではなく、データセンタのリソースを使う端末/デバイスも重要になってきます。パソコンだけではなく、電話、netbookのような端末とかを含めたいろいろな技術をオープンに議論したかった。でも残念ながら、今回はそこまで踏み込む余裕はありませんでした。

余談ですが、特に携帯端末だとローミングが重要ですよね。例えば、3Gから自動的に無線に切り替わるとか、接続を切らないで続けたい。実現するには、いくつかの技術を組み合わせる必要がありますが、一企業や一分野の技術だけでは、どうにもならない・・・。インターネットみたいにオープンな技術で世界規模で標準化していかなければ、実現できないんですよ。


杉田:  課題は多い、ということですね。その辺は今回のミニサミットを契機に、今後も広く深く議論していく必要がありそうですね。


フェルナンド:  はい、そう思っています。世界中どこでもと範囲を広げると、ネットワークのセキュリティとか、リソース管理、制御とか・・・、いろいろな問題がでてきます。


杉田:  そういう意味では、発表や議論に参加する人の選出は重要だったと思いますが、今回はどういう人たちに声をかけたのか、簡単に教えて下さい。


フェルナンド:  まず、必要な技術・要素を考えました。仮想化技術、コンピューティング資源、ストレージ、それからこれらをアクセスするためのネットワークも必要ですよね、そして運用・管理。それらが大きな柱でした。

仮想化の全体説明とKVMの技術の説明はRed HatのChris (Chris Wright)にお願いしました。ネットワークはVyattaのStephen (Stephen Hemminger)、ストレージはChristoph (Christoph Hellwig)です。それぞれ長年担当しているコア開発者兼メンテナです。まさに今回のミニサミットに相応しいメンバでした。また、Linuxの仮想化環境において準仮想化デバイスを実装するためのフレームワークであるVirtIOについても、IBMのRusty (Rusty Russell)が発表してくれました。資源管理についは富士通のGui (Gui Jianfeng) がディスクIOの制御に使われるBlock IO Controllerを発表しました。

尚、併催のトレーシングミニサミットとの共同セッションで、トレーシングと仮想化の主要開発者を招いて仮想化環境におけるトレーシングやデバッギング等について議論したので、盛りだくさんできましたね。

発表テーマと発表者は、CFPでの採択結果を基に、先立って開催されたKVMForumと内容が重ならないように、その主催者を務めたChris Wrightと調整しながら決めました。彼は細かいことにも丁寧に相談に乗ってくれましたし、他の発表者も積極的に協力してくれました。うれしかったですね。


杉田:  参加を呼びかけた人たちは、すぐに承諾してくれましたか? 


フェルナンド:  はい。即答でした。


杉田:  即答! その積極性のその理由は何なのでしょう?


フェルナンド:  海外の開発者は、日本に対していろいろな期待を持っているように思います。日本はITに関してすごく環境が整備されていて、世界のどの国よりも信頼性の高い基盤がすでに存在している。例えば、最先端の端末もあるし、ネットワーク帯域幅も広い。他の国では実験できないことも、日本は実際に使って試せる環境がある。アメリカでも中国でもない、日本が最適。その環境で自分達の機能を使っているユーザーの意見は重要・有用なので、実はものすごく聞きたいと思っている。その意味で、日本はすごく優位な立場にあると思います。なのに活かしきれていない。もっとその立場を活かせると良いと、ずっと思っていたんです。だからこそ、今回はチャンスだと思いました。


杉田:  なるほど。しっかりした基盤があるので、先行して次世代技術を試せるし、そこから出た裏づけのある要求や意見を聞きたい、という期待があるので開発者達も参加してくれたわけですね。それ以外にも開発者達には期待があったのでしょうか?


フェルナンド:  彼らは、日本からのコードのフィードバック、すなわち、意見だけでなく、一緒に開発してくれるエンジニアがいることを期待している。その開発者と議論したいと思っている。それも大きな要因だと思いますね。日本には優秀なエンジニアが沢山いますので、もっと開発貢献できるし、メンテナにもなってもらいたいと思っているようです。日本人のエンジニアには、もっと積極的にかかわって欲しいですね。


杉田:  なるほど。我々日本側も、その期待に応えるために、仲間を増やしたり後輩を育てて行かなくてはいけませんね。


フェルナンド:  それも今後の課題ですね。


杉田:  ところで、話は少し戻るのですが、ストレージと仮想化の関係について、もう少し詳しく教えて下さい。また、どのような議論をしたのでしょう?


フェルナンド:  仮想化環境にはデータを保存する方式がたくさんあります。たとえば、仮想化環境では物理環境と同じく仮想マシンにDAS (Direct-Attached Storage)デバイスとSANデバイスのパーティションとLUNを割り当てることもあれば、ファイル、いわゆるバーチャル・ディスク・イメージ、という形で保存される仮想ディスクイメージもあります。後者に関しては、ファイルの置き場として、従来のファイルシステムとは別にNASや分散ファイルシステム等があり、選択肢がいろいろあります。クラウド環境だと、どのストレージを使うと一番効率的かが重要ですので、それらについて議論しました。


杉田:  なるほど。ということは、今回目標としていた分野、先ほど教えて頂いた4種類ですが、議論できたのですか? 遣り残した課題はありますか?


フェルナンド:  仮想化、ネットワーク、ストレージ、運用・管理のうち、最初の3つは議論できました。でもまだまだ議論すべき課題はありますので、引き続きやって行きたいです。また、運用はまだ議論できていません。実は、libvirtのキーマンで、かつ発表担当者であるRed HatのDaniel (Daniel Berrange)は、来日していたのですが病気で倒れてしまって、ミニサミットに参加できなかったのです。このため議論ができませんでした。本人もとても残念がっていました。


杉田:  それは残念。でも、それはぜひリベンジして欲しいですね。今年開催のLinuxCon Japan 2011の良いテーマになるのでは?


フェルナンド:  そう思っています。


杉田:  今度は感想をお聞きしたいのですが、仮想化ミニサミットをやってみて、いかがでしたか?


フェルナンド:  良い点と反省すべき点があったと思います。良い点としては、海外から色々な開発者が参加してくれたこと、さらにエンドユーザーも参加してくれたので、そこで色々な議論がされたこと、そして、ミニサミットが終わった今でも、継続してエンドユーザーとコミュニティの主要開発者との交流が続いていることです。今でも定期的にユーザーが開発者に要望を伝えたり、逆に開発者からユーザーに意見を聞いたりすることがあります。


杉田:  ユーザー自身がコミュニティの開発者とコンタクトするようになったということですか?


仕掛け人に聞く フェルナンド氏フェルナンド:  そういった例が出始めています。でもまだ数は少ないので、これからももっと増えてほしいですね。
また、時には日本にいる主要開発者や私自身が窓口になることもあります。例えば、現在、コミュニティのKVM開発者から、「libvirtにどの機能を入れるかを議論しているので、日本のユーザーがどのような機能が欲しいのか、クラウドに役に立つ機能があれば教えてほしい」という話が私の方にあり、エンドユーザーに展開しました。意見を集めて、コミュニティ開発者に伝えています。

杉田:  開発者が日本のエンドユーザーの声を参考にしているということですか。それは大きな成果ですね!


フェルナンド: はい。やはり要望は開発につながるのが一番です。そうすることでもっと価値が出てくる。一部のユーザーは、もう情報収集だけでは物足りない状態になってきていると思いますよ。


杉田: それはいいですね! これからもっと多くのエンドユーザーが参加して、もっとたくさんの意見が出てくれば、結果としてユーザー製品の機能も充実したり、使いやすくなったりしますよね。


フェルナンド: そうなんです。だから、このオープンソースのクラウドへのプレゼンスは大きいと思います。今後は、今の活動を成功させて、どこかのタイミングで成功事例として発表したいですね。多くの人たちにアピールして、要求がコミュニティと結びつき、実現し、それぞれの仕事や製品にも活かせることを知ってもらいたいです。


杉田: 一方通行だけではなくて、双方にうまくやっていけるようなサイクルができるといいですよね。エンドユーザーもコミュニティに意見を言うような土壌ができて、それを受けて開発ももっと進む、という感じ。そこに日本からの意見もいっぱい盛り込まれると、すごく良いですよね。


フェルナンド: その通りです。なので、今回のミニサミットで日本からの動きが出てきたのはすごくよいことなんです。例えば、今、クラウド技術やサービスが盛り上がっていますが、現状はアメリカの企業が主導権を握っていて、日本市場のことがほとんど考えられていません。でも、今回のミニサミットのおかげで、海外の企業に属しているコミュニティ開発者から、日本の意見を聞かれることも多くなってきたと思います。それで、その技術を使って、日本ですごいことやっている/やろうとしている人達もいるよって、認識してくれている感じです。特にKVMに関して、かなり貢献してきていますからね。


杉田: すごいですね。その意味では今回の開催は成功ですね。


フェルナンド: はい! 花火みたいなものではなくて、イベントが終わってからも継続して、作った人脈を活かしていける、というのが実感できましたし、面白いです。実際に活かされているわけですから、有意義でしたね。


杉田: ところで、反省点はあるのですか?


フェルナンド: フェルナンド:時間配分でしょうか。もっといろいろな話題を議論したかったのですが、時間が足りなくてできませんでした。もう少し配分を考えるべきだったと反省しています。でも、一日ではなく、2日間くらい欲しい内容でしたね。やっていて短く感じました。

それから、今後のLinuxCon Japanで、仮想化に限らず、BOFができるといいなと思いました。小さなテーマや仕様段階の機能なども、もっと気軽に議論できる場が欲しいですね。少人数でも開催すると有意義だと思います。
(BOF : Birds of a Feather. 特定のテーマの自由討論会)


杉田: BOFについては他の方々からも要望が来ています。ニーズが高いようなので、次回は検討したいですね。ぜひ、ご協力下さい。
ところで、時間が足りなくなったということは、ミニサミットでは盛り上がったのですね。会場の様子はいかがでした?


フェルナンド: 聴衆がいっぱい集まってすごいと思いました。ちょっと感動しました。席に座れず立ち見していた人も多かったです。仮想化の方もですが、トレーシングミニサミットとの合同の方もたくさん参加してくれましたね。うれしかったです。ただ、日本でのコンファレンスでよくある話ですが、せっかくのチャンスなのだから、もっと聴衆から質問してもらって盛り上がらせたかったです。休憩時間には結構議論が盛り上がっていたのに。。。 


杉田:  Linus (Linus Torvals)も11月に受けた日本でのインタビューの中で、「カーネルサミットの参加者たちは、正式なトラックよりも、むしろ廊下での立ち話に大きな意義を見出していたようだ」と言っていましたね。サミットに参加する人たちも同じ傾向にあるのかもしれませんね。


フェルナンド: 確かに。リラックスした状態の時の方が良い議論ができるのかもしれません。でも、みんなで課題や技術を共有し、よりよいものにしていくためにも、やはりこういう場での議論も盛り上がって欲しいです。


杉田: 個人的に、ミニサミットをやってよかったと思うことはありますか?


フェルナンド: ミニサミットの準備や、開催日に進行役を務める過程では、色々と勉強になりました。また、人脈の重要性を改めて認識しましたね。オープンソースの世界で活動した7~8年の間に構築してきた人脈があったからこそ、あれだけのコミュニティ開発者が日本に来てくれたのだと思います。努力がひとつ実った感じですね。今回のことで新しい人脈も作ることができたので、今後に活かしていきたいとい思います。また、いろいろな人たちが協力してくれたこともうれしい。お世話になりっぱなしで本当に感謝しています


杉田: 最後になりましたが、LinuxCon Japan 2011への意気込みや希望があれば教えて下さい。


仕掛け人に聞く フェルナンド氏

フェルナンド: 先ほど言ったように、運用に関しては何も議論出来ていないので、ぜひまたミニサミットをやりたいです。運用管理系はこれから日本でも重要になってくるはずですから。またKVMの普及のためにも、オープンソース運用ツールのlibvirtやvirt-managerなどの機能を充実させることが重要なので、その点も議論したいですね。インターフェースなどは標準化すべきですし、その検討のためにもミニサミットのような場で議論することは重要だと思います。

オープンソースは単なるコスト削減の道具ではない。積極的にコミュニティに参加して貢献すると、逆にコミュニティからのフィードバックと貢献を受けるとか、オープンソースの本当の恩恵を享受できます。また、Linuxカーネルのように一社で取り組むには規模が大きすぎるプロジェクトを成功させることができます。クラウドに関しても、オープンソースの作法に従って、オープンにみんなで実現していった方が良いと思います。


杉田: ぜひ、ミニサミットをモデレートして、議論を盛り上げて欲しいです。楽しみにしていますので、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。


 


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