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Home 特集 仕掛け人に聞く 資源管理機能cgroup開発の仕掛け人 亀澤 寛之氏

仕掛け人に聞く 亀澤寛之氏

メンテナの仕事


杉田:  少し脱線になるかもしれませんが、メンテナの仕事について教えて下さい。亀澤さんはメモリcgroupのメンテナをされているわけですが、どのような作業をどう行っているのでしょう?


亀澤:  送られてくるパッチのレビューが主な仕事です。僕は送られてくるパッチはすべて見ます。説明がなかったり、意味がわからなければ聞きます。なぜそう思うのかって。いきなりNAK(拒否)はしないようにしています。NAKは好きじゃないので、まず聞きます。


杉田:  いきなりNAKしないというのはうれしいですね。NAKが来ると、投稿者はめげちゃいますからね。でも、送られてくるものを全部見て、その背景を確認して、修正を指示してというのは大変じゃないですか? 特に多くのパッチが集中して送られてくる場合は。


亀澤:  そうですね。でもがんばって見ています。ただ、毎日バージョンアップして送って来る人が時々いるのですが、その時は、個別にメールを送って注意を促します。毎日バージョンアップしてもレビューできないからやめて欲しいって。


杉田:  毎日? 亀澤さんから修正提案があると、直しましたって送って来るということ?


亀澤:  そうなんです。でも、何度も修正を求める時には、一度手を止めて全体を見直した方が良いと言いますね。僕自身も、パッチがversion 5まで行って入らない場合は、採用してもらえない理由を考えて根本的に見直します。そして、だいたい全部作り直しますね。その頃には、その機能の動きも理解できているので、心に余裕を持って、パッチの全書き換えができますから。全部変えないこともあるけど、一度考え直した上で、そうしています。僕のパッチがversion 6まで行った時にはversion 5と実装がガラッと変えていることがあります。プランAが駄目ならばプランBだと。


杉田:  プランAでやり取りしているうちにプランBを思いつく、という感じですか?


亀澤:  というよりも、プランBを考え出すようにしています。そして、プランBが駄目そうな時はプランCを。


杉田:  そういう余裕が出てくるといいですよね。どうしても最初は、自分のアイデアに固執して、入れてもらうのに必死になっちゃいますから。


亀澤: それはやめた方が良いですね。自分が投げたパッチそのものではなく、「何を実装したいのか」が重要なはず。それを実現するにはどうすればよいか、そして、もっとよくするのにはどうすればよいのか、ということを考えて、必要ならば実装方法そのものを変えることも必要なんです。


杉田: でも、その機能自体がいらないなど、考え方を否定されるとめげてしまいますよね。亀澤さんにも経験ありますか?


亀澤: もちろん、あります。その機能自体が本当にいらないのならば受け入れます。でも、自分が解決したい問題があって、現在のままでは解決できないのであれば、他にどうすればよいのかを考えてプランBをひねり出す。その後の展開でプランAを再提案するのもひとつの手です。昨年のLinuxCon Japan 2010のパネルディスカッションでも言ったのですが、Justificationなんです。自分の取り組みを正当化する。それは難しいけど一番重要なんです。必要だと思うならば諦めないことです。


杉田: なるほど。では、パッチ受け入れ以前の問題なのですが、若い開発者をコミュニティで増やすには、どうすればよいでしょうね?


仕掛け人に聞く 亀澤氏亀澤: 興味がある分野で提案がある人は、まずはパッチを送ってみればいいと思いますね。どの分野でも。がんがん突っ込んでいけば、そのうちコミュニティで認められてくると思いますよ。でも、前から言っていますが、バグフィックスから入るのが無難だと思いますね。なかなか採用されないことが多いから、結構ストレスがたまる時があります。なので、ある程度ゆとりがある時にやるのが良いですね。ただ、パッチの量が増えると、レビューが追いつかないかもしれない。ぜひ、レビュー者(メンテナやコア開発者)の数も増やしたいですね。

杉田: オープンソースは学生も使っているはずなので、学生の参加も増えて欲しいですよね。


亀澤: 学生とその点を話したことがあるのですが、やはり英語への苦手意識があるようです。


杉田: 英語の壁ですか。それは企業の若手開発者からもよく聞きますね。


亀澤: 別に苦手に思わなくてもよいのに、と思いますね。メールでやり取りする分には、考える時間や辞書を引く時間はありますし。一番重要なのは、議論したい、もしくは提案したい技術があること。それを説明するための言語ですから。


杉田: コミュニティやLKMLがどういう世界かわからないという不安もあるのでしょうか? コミュニティでの技術交流やパッチ投稿の仕方がわからないとか。


亀澤: そうかもしれません。ただ、それを学ぶ場は学校に限らなくても良いと思います。Linuxの勉強会はいろいろなところで行われていますし、LinuxCon Japanのような技術カンファレンスでも学べるはず。一度参加してみれば、障壁も低くなるかもしれませんね。

LinuxConでの発表内容


杉田:  ところで、亀澤さんはLinuxCon japan 2011で発表されますね。その発表内容について教えて下さい。今回の発表内容は亀澤さんが開発したcgroupの機能に関するものですか?


亀澤: 発表はメモリcgroupの機能全般を紹介します。今upstreamカーネルコードにある機能と、Red Hatにある機能など。また、4月のmm summitで議論した内容と今後開発する機能についても話そうと思っています。今回は中のインプリに極力踏み込まないつもりです。


杉田: それはどうしてですか?


亀澤: あまりインプリに踏み込んでも面白くないかな、と思うので。2年前のLinux Symposium Tokyoのプレゼンでは、とにかくがちがちにインプリを説明したんです。でもあまり反響がなかった。なので、今回は概要を説明し、まずは機能の使い方や用途・効果などを理解してもらおうと思っています。


杉田: ディストリビューションに入った新しい機能に興味はあるが、まだ使ったことがないという人にとっては、全体がわかる話をして頂けるのはうれしいですね。聞けば興味を持ち、使ってみたくなるはず。そういう意味では、今回の発表はジャストタイミングかもしれませんね。でも、機能がわかるとインプリの話も聞ききたくなるかも。


亀澤: 僕は会場をうろうろしているので、インプリの話が聞きたい人たちは、声をかけてもらえればいつでも話をしますよ。
 そういえば、LinuxCon Japan 2011では、僕以外にもcgroupに関連する発表もあるようですね。改善すべき課題が見えてくるかもしれないので、楽しみにしています。また、LinuxCon Japanの3日目に発表するsystemdにも注目しています。これはinitの代わりになる機能で、cgroupをサポートしているんです。


杉田: 今後のLinuxCon Japanへの期待とか希望はありますか?


亀澤: 来年は京都で、とか? でも、冗談抜きで、関東以外でやるのもいいと思いますね。来年でなくてもよいですから。また、大学と協力してやってみるのも面白いかも。


杉田: なるほど。今回、LinuxCon Japanのボランティアに、大学生が何人か参加してくれるので、関心がある学生は結構いるんだなと思っていたところです。大学や学生と連携すると、新しい発想が生まれるかもしれませんね。


亀澤: 学生の開発者を増やす話にも関係しますが、大学の人は、Linuxで開発して論文を書いている人が多いはずです。だからもう一歩進んで、パッチを書いて欲しい。その機会にもなるかもしれません。


杉田: そうですよね。検討してみます。

 

******

 


杉田: 最後に、開発者の人たちに何か一言お願いします。


亀澤: メモリcgroupのメンテナンスと開発はしばらく続けますので、要望があったらください。新しい開発者はWelcomeなので、臆せずにパッチを送ってください。


杉田: ぜひ、そうして欲しいです。亀澤さんのところにパッチを送ると、いろいろと丁寧に議論してくれることがわりましたし、ぜひ、開発者の皆さんにはチャレンジしていただきたいですね。
今日はありがとうございました。 



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